第197話 犬追い祭り
「思っていたよりも大分早い帰還ですね。もしかして、犬追い祭りのために急いで戻ってきたのですか?」
「いろいろありまして・・・・・ところで犬追い祭りってなんですか?」
おもちゃさん達と遭遇し、迷うことなく第二のボスのところへ向かえたのも一因だが、最大の要因はバロンのやる気だろう。
虐められる浦島さんの亀ならぬ浦島さんの猫を探しに南へ向かいたくて、寄り道なしの一直線でボス討伐に挑み、その後も西の大国を拝むことなく戻ってきた。
今朝だって起きて直ぐに南へ行くぞと私たちの支度を急かしここに至っている。
私としては件の対猫戦中の集団が攻略を終えるまで時間を稼ぎたいのだが。
いろいろを思い出して苦笑いした私の耳が気になる単語を拾った。
犬追い祭りとは何ぞや。牛追い祭りなら知っている。牛と鬼ごっこする危険な祭りだ。
同じような命名ならば、犬追い祭りは狩猟犬と鬼ごっこするとか?
「毎年、春の終わりごろに大繁殖するシュインバイレアイフを街の者総出で狩る祭りのことですよ。
シュインバイレアイフが増えすぎると東門が開けられなくなることもあるので、この時期に間引きを行っているのです。
また、この時期に魔物の数を間引くことで少しでも
なんでも今の時期になると東の草原でアイフル犬が大繁殖してあちこちにすりすりと身体を擦り付け、門を開けられなくしてしまうらしい。抜け毛で。
アイフル犬がすり寄った門扉の隙間にアイフル犬の抜け毛が挟まり、蝶番などが抜け毛で動かなくなり、最終的に扉を開けられなくなってしまうらしい。
アイギスやバロンの毛は抜けないけれど、モンスターの毛は抜けるんだ?
それとも、こう、イベント的な何かで今だけ抜けるようになっているのだろうか。
アイフル犬の抜け毛に興味を惹かれて少し様子を見に行きたい気持ちが芽生えているが、腕の中のバロンの視線がそれを許してくれそうにない。
そんなに熱心に南の方を凝視しなくても浦島さんの猫は逃げないよ。だって元から幻だもの。
そして気になる渡航シーズンという単語。
東西南北、船で移動できそうな場所は思いつかない。しいて言うなら西の砂浜からなら出航できるだろうか。
でも前に沖合に出るのは危険だって聞いた記憶があるけれど、季節によっては安全なのかな。
「雨期を過ぎると北の沼地の水嵩が増し、船での往来が可能になるのですよ」
頼りになるクロエもんが疑問符一杯の私へ分かりやすく説明してくれる。
渡航シーズンと呼ばれる季節は一年に二回あり、そのうちの一つが梅雨明けから晩秋の頃ともうすぐ到来するらしい。
もうすぐと言っても今が卯月の終わりごろなのでもう一月か二月先の話なのだが。
まぁ、とにかく、此方でも現実と同じように水無月の頃に梅雨がやってきて雨を大量に降らせるらしい。
その雨により北の沼地が増水し、梅雨明けには船で北の国まで渡ることが可能になると言う。
また、梅雨の影響は東にも及び、東の草原には長雨によりつくられた河川が現れるのだそうだ。
この河は東の大国まで流れており、冒険者などは河沿いを徒歩で、資金のある商人などは船でこの河が現れた時期にのみ東の大国に向かうのが通常の旅の常識らしい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます