第187話 ウニ・・・食べたい・・・・・
目を開ければそこは森の中だった。
なぜ?西の腰痛国の時には転移した先に待ち受けていたのは門だった。道化師に似た形の美味しそうな門。
しかし、今目の前に広がるのは人工物を微塵も感じない森である。
転移先は街の中に設定されてるんじゃないの?だって胃痛国だって始まりの広場に転移するし、腰痛国も綾錦の広場に転移したのに。
疑問符に埋め尽くされても、何度瞬きを繰り返しても、目の前に広がるのは森である。
自分たちが立っているのは森の中でも大きく開けた場所のようで、森の木々は少し離れたところにある。
背後には湖。月光を受けて煌めく水面により底が見えず深さもわからない。
木々の多くは転移前にも生えていた杉の木・・・によく似た木のようだ。
形は杉の木に似ているが、杉の木と呼ぶには色がおかしい。
杉は常緑樹で一年中、緑の葉を繁らせているはずが、前方に見える木は黄色い葉を繁らせている。
一面、花粉の色だ。目と鼻と口に花粉が飛び込んできそう。花粉症の人が発狂しそうな光景である。
「キャァ——アアアアッ!!ウニが——————!?」
突然の悲鳴に吃驚して背後を振り返った。
「大きなウニが!湖に!!」
雲丹?雲丹ってお寿司とかに乗ってるあの雲丹?
ここにあるのは湖で、雲丹は海に生息する生き物だった気がするが、この湖の底に雲丹がいるのだろうか。
覗きこんだ湖は燦々と耀く月の光で水底は窺えない。
ちょっと、お月様、もう少し光量を落として貰えませんか。水底に存在するらしい大きな雲丹の姿が見えないじゃありませんか。
「ルイーゼ・・・・・なにしてるの?」
アイギスの視線が冷たい。と言うかドン引きされてる気がする。
「ウニ・・・食べたい・・・・・」
大きな雲丹とか夢が広がリング。どれくらい大きいのだろうか。
雲丹丼何杯分かな。お腹すいたな。雲丹食べたいな。
『・・・・・・・・・・その雲丹は食べない方がよいぞ』
バロンにまで引かれてる?皆、雲丹好きじゃないの?
少しの間、せめて一目でも雲丹の姿が見えないかと湖を覗きこんでいたが、お月様は雲に隠れるどころか全身しっかり姿を見せて爛々と湖を照らしてくれた。
水面の反射が強くなり、底に沈んでいるであろう雲丹は影も形も見えなかった。お月様、さっきよりも光量あげてません?
諦めて湖から離れる。
アイギスやバロンは雲丹食べたさに私が湖に飛び込むんじゃないかとはらはらしていたようだが、さすがにそこまではしない。
水に濡れるのは嫌だし。水に濡れずに潜れるとしたら飛び込んだかもしれないけれど、そんなことできないので雲丹は諦めよう。
夜ご飯がはやかったから、ちょっと小腹が空いてたんだけどなぁ。雲丹食べたかったなぁ。
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