第185話 油揚げ美味しかった
「ルイーゼ?何してるの?」
ポーチから取り出した花を大魔王がいた所に少しだけ近づいてから地面に置き、両手を合わせる。
大魔王没地点からはまだ距離があるけれど、これ以上は近寄りたくない。
たとえ血の湧き池が消えたとしてもだ。
「供養」
何処で手に入れたのか忘れた橘の花を捧げます。
だから呪わないでください。祟らないでください。両手を合わせたまま一心不乱に祈る。
「・・・・俺たちもやった方が・・・」
私の隣にちょこんと座ったアイギスが真似るように手を合わせている。
それに倣って、サルミアッキさんやお父さんも合掌する。
「ほら、お前たちも。特におもちゃは念入りに祈った方がいいと思うよ」
リーダーさんは同じように手を合わせた後に、他の仲間たちにも同様に合掌するよう勧めだした。
「なんで俺!?」
「お前はこの間カラスに喧嘩売ったでしょ!」
おもちゃさんは最近鴉に喧嘩を売ったらしい。
大魔王以外にも鴉のモンスターがいるんだ。そしてその鴉からも恨みを買っているらしいおもちゃさん。
・・・私も念入りに祈った方が良いと思うよ。
おもちゃさん、ウォトカさん、筋肉さんも続いて合掌する。
皆で南無南無。恨まないでください。化けて出ないでください。大魔王よ、安らかに眠れ。
黙祷を捧げた皆が背後を振り返る。この中に一人だけお祈りを行っていない人がいます。
バロンではない。確かにバロンも手を合わせていないが、バロンが己の倒した相手のために祈るなんてことするわけがないとみんな分かっている。
己の肉球を舐めるのに忙しいバロンは合掌なんてしない。
では、誰か。お2さんである。お2さんは頑なに大魔王へ手を合わせることを拒否していた。
「いやや!わいはカラスとは和解しない!」
まぁ、これは私たちの気持ちの問題と言うか、心の平穏を保つための儀式でしかないので、無理に手を合わせる必要もないだろう。
なんて思っていた時期が私にもありました。
「祈って!?お2さん!祈って!?」
「いやや~!ルイーゼちゃんのお願いでもカラスとは和解できん!」
大魔王へ捧げた橘の花に異変が。まだ蕾だった花が急速に咲いて枯れていく。
怒ってるの?出所不明の謎の花を捧げたのが悪かったんだろうか。
そんな悪い物じゃないと思うの。たぶん。拾った記憶もなければ、摘んだ記憶もないけれど。
ドロップ品かな?でも、モンスタードロップなら生産地と生産者の表示があるはず。草原犬の根付みたいに。
橘の花はポーチの内容物リストでも「橘の花」だった。本当にどこで手に入れたんだろう。
「なんでもいいから謝って!?合掌して!?手を合わせて!?」
「いやや~!!」
橘の花に起こった異変は続く。
ホラーは駄目って言った!ホラーはダメって言いました!!
花は枯れ、実が稔る。しかし、その実も瞬きする間に枯れてしまう。
どんどん腐っていく橘の実が地面に落ちた。あ、あ、あ“~~~~~~~!!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます