第183話 打楽器魔王
「安心して。ルイーゼ」
どうしようかと悩む私の足元に白いもふもふ。
「ルイーゼには僕がついてるから」
「アイギス!」
最近、うちのアイギスちゃんの騎士化が著しい。
いや、アイギスは初めから騎士だったか。盾職スキルを得る前でも身を挺して庇ってくれたし。
その後もずっと、全身全霊をかけて守ってくれている。
感謝の気持ちを込めて今夜は何でも好きなものを食べさせてあげるからね。ブラッシングもマッサージも頑張るよ。
もちろん、遠くの方で大魔王を蛸殴りにしてるバロンにもフルコースを送るよ。
私、バロンのこと忘れてない。忘れてないから、大魔王を打楽器代わりに叩いて自己主張するのはやめて。
叩くたびに大魔王が奇声を発して怖いから。
感動的に見つめ合う私とアイギス、二人の間に流れるBGMはオ“ア”ァ~だかオ“エ”ェ~だか分からない大魔王の叫び声だった。
感動がどこかに吹き飛んで行ってしまう。合いの手を入れるように重そうな打撃音が一定の間隔で入るのが余計に嫌だ。
「ルイーゼ!飛んで!」
アイギスの合図でその場を飛びのく。
数瞬後に耳を劈くような雷鳴が轟き、先程までいた場所へ稲妻が走る。
しかし、私はそれを視認することもなく、急いで仲間たちへ視線を走らせた。
筋肉さん被弾、おもちゃさんとサルミアッキさんは上手く避けたようだ。
他の人は今回の対象ではなかったため問題ない。
けど、ウォトカさんの体力が減ってきているから筋肉さんの回復をしながらでも時々、応急手当を投げたほうが良いな。
「次!炎蛇!避けて!」
リーダーさんの指示に従い素早く散会し、向かい来る炎の蛇を避ける。
幸い、大魔王との距離が開いているため、ウォトカさんと筋肉さんもなんとか回避できている。
だから主なダメージは落雷によるものだ。それもなんとか直撃を避けられている。
いくつかの好条件が重なり、なんとか皆耐えきっていた。
そうでなければ、私一人でこの人数の回復を回すことなどできなかっただろう。
「次!炎龍!伏せて!」
姿勢を低くし、できる限り地面に平らになる。
地面に伏せた私たちの頭上を炎の龍が通り過ぎていく。熱風が荒れ狂う中、アイギスが叫ぶ。
「ルイーゼ!飛んで!」
ビーチフラッグの要領で跳ね起きて、横に飛び退く。
間髪入れずに落雷が襲う。
炎龍や炎蛇と違って落雷は時間差がないので厄介だ。距離が離れていても関係なしに襲ってくる。
今回の標的はウォトカさんとサルミアッキさんとお父さんだったようだ。
ウォトカさんが少し体力を減らしている。そろそろ一度医学で回復させた方がよさそうだ。
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