第178話 丸太と反復横跳び


「・・・・・なんか・・・・・・ごめんね・・・この状況を見るに、俺たち寄生っぽいし」


「そんなことないですよ!」



大魔王の落雷攻撃を避けながら謝るリーダーさんの言葉を即座に否定する。


この戦いにリーダーさんたちは絶対に必要だった。断言できる。



「私とアイギスだけじゃ、きっと、この雷の嵐を抜けられませんでした・・・・」



バロンにより、左手の羽団扇は蹴り落されて使えなくされている。


しかし、右手の錫杖だけは放してなるものかと決死の抵抗を見せた大魔王は己の生存を懸けて何度も落雷をけしかけてきていた。


なんとかバロンの攻撃の手を止めようと小さな漆黒に雷攻撃を繰り返している。


そのついでと言うように私たちのもとにも稲妻は走っていた。稲妻の数は5本。


ちょうどパーティの半分の人数分だ。5本で固定なのか、パーティの半数に落ちる仕組みなのかは不明だが、


どちらにせよ、私たちだけで大魔王討伐に挑んだ場合、アイギスと私、大魔王の雷攻撃の度に、毎回、どちらかには必ず落雷が来るだろう。


つまり、何時もセットで行動している私とアイギスは毎回稲妻に襲われると言うことである。



「・・・・言い方が悪いですが、自分たち以外に、その・・大魔王に狙われる対象がいるのは凄く助かります・・・」


「的は多い方がいいってことだね」



ありていに言えばそう言うことである。


大魔王を連打するバロン。そんなバロンに対抗するため、大魔王の攻撃も雨霰のように降ってきている。


こんなに狭い間隔で放たれる落雷をよけ続けることは至難の業である。


現在、私たちは反復横跳びを続けることで打ち込まれた避雷針から逃げ、落雷を回避している。


そんなに速く飛ぶ必要は今のところないが、それでもずっと断続的に飛び続けているのはつらい。時々、体勢を崩してアイギスやリーダーさんに助けられてるし。


これでリーダーさんたちがいなかったら私は早々に心が折れていただろう。アイギスと二人だけでこの雷の嵐を切り抜けるのは無理すぎる。



ちなみに、速さに自信のない二人は初めから回避を諦めて地面に倒れている。


HPが全損したのではない。他の仲間に身をゆだねて丸太のように地面を転がっているのだ。


お2さんやお父さんが地面に倒れた二人を蹴り転がしながら大魔王のいかずちを避けている。


私とリーダーさんは転がる二人を中心に時々、余波で減る体力を回復させながら横跳びを続けている。


アイギスやサルミアッキさんは私たちのフォロー役を務めてくれている。



「・・・・サルミアッキさんの魔法で二人を移動させることはできないんですか?」



蔦の強度は分からないけれど、使いようによっては蔦で二人を運び、攻撃を回避させることもできるのではないだろうか。



「そこまでの自由度がない・・・・いや、しかし、それは・・・・・・・・」



サルミアッキさんが己の世界に入ってしまった。足はしっかり反復横跳びを続けてるから問題はないか。


自分もしっかり飛ばなければと気合を入れ直したところで転びかける。しまらない。



「見たくない光景・・・・・でも、有用そうだから止められない・・・・・・」



私を助けてくれたリーダーさんが何かぶつぶつと呟いている。


お礼を言った後に聞いてみたけれど、何でもないよと誤魔化されてしまった。



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