第176話 珍しい光景


背後で流れていたピアノの音が止まる。大魔王の後ろで光る巻物が輝きを増す。



「うおっ、眩し!?」



め、目に来る。大魔王はサルミアッキさんが行った目が目が攻撃を根に持っていたのだろうか。


私たちの目に閃光による元祖目が目が攻撃が放たれる。



「っ!?」



突如、強い衝撃を感じて、身を竦ませる。


もし、地面に貼り付けられておらず、立っていたなら、この衝撃で地面に崩れ落ちていただろう。


それくらい強い衝撃だった。


まぶたの裏に感じていた刺激がなくなり、閃光が終わりを告げる。


目を開ければ大魔王がはじめに登場した時のように地面に錫杖を打ち付けて、手に羽団扇を構えている。


自分たちのHPを確認すれば半分まで減っている。


なんと、あのバロンの体力まで半分とまではいかずとも減っていたのだ。バロンのHPて減るんだ!?初めてバロンのHPバーが動いているのを見たよ。



「前衛下がって!至急回復は立て直しヨロ!」



珍しい光景にしげしげとバロンの体力を見つめてしまったが、リーダーさんの言葉に己の役割を思い出した。


筋肉さんの回復をしないと。アイギスの回復も必要だ。バロンの回復は・・・果たして私の回復スキルでどうにかなるのだろうか。


回復スキルには使用するスキルによる回復量の差とそのスキルの熟練度による回復量の差、二つの差がある。


私が持っている応急手当と医学では、医学の方が体力を回復できるし、同じ医学でも医学スキルのレベルが高いほど回復量は増える。


それに加えて、回復量は回復する対象によっても変わるようだ。



これは回復対象がアイギスだけの状態から筋肉さんとアイギスの二人に増えたことでわかかったことだが、回復量にはスキルとそのスキルの使用者だけでなく、スキルの対象者も影響しているようなのだ。


そもそも、回復スキルによって回復する量は明確な数値が判明している訳ではない。


スキルを使用すると体力ゲージの黒くなった部分が数パーセント減少し、残存体力を表す青色部分が増える。


だから、回復量が異なると言っても違っているのは体力ゲージの何パーセント回復したかと言う割合の量である。


そしてその増加する割合がアイギスに回復をかけた場合と筋肉さんの場合で異なっていた。


その差はおそらく、二人の体力や頑丈さなど、ステータス画面では明確に表示されないマスクデータが生み出していると思われる。


マスクデータの存在は検証班により既に解明されている。


ゲームでよく聞くCONやSTR、INTなどの数値はステータス画面に表示されないが、マスクデータとして存在している。


検証班の中でも現実で同じくらいの腕力の二人が同程度の身長、体格のゲームキャラをつくり、腕相撲をしたらしい。


結果は片方の圧勝に終わり、何回やっても、腕相撲のコツなどを教授してもそれは変わらなかったと言う。


ならば、より強いキャラクターをつくるためには、ゲームキャラを何度も作り直す必要があるのかと言うとそうとも言えない。


キャラクターを最初に作った時にマスクデータであるステータスは決定しているようで、その後は何度作り直しても変わらないらしい。


例外は幼女ペナルティのみだとか。・・・・幼女ペナルティは現実の体格から大きくいじり、身長などを小さく変更した場合に発生する。


つまり、ゲームキャラをロリショタに作った場合に課せられるペナルティのことである。


幼女ペナルティを負った探索者は体力と腕力が著しく低下するそうだ。


また、体力が低いせいか、夜間行動にも支障をきたすようで、アドレナリンが大放出されるようか興奮状態にない限り、すぐに眠気に襲われると言う。


ちょうど今の私みたいな状態だね。まぁ、私は、現実から、身長を、変更してないんだけどね!


・・・こんなことなら、天狗並みの下駄を履いておくんだった。ちょうど目の前で空を飛んでいる大魔王のように高い下駄を。


ナビさんと熱中して髪型とか、目の色とかこだわってキャラをつくり込んでる場合じゃなかったんだよ、当時の私。


一番大事な身長の項目をいじり忘れるなんてうっかりにも程があるよ、私。


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