第170話 炎上大魔王
バロンの攻撃に続いて盗賊コンビも攻撃を加えているが効果はいま一つのようだ。
HPはわずかに減るものの、大魔王にはあまり効いた様子がない。
もうすぐ大魔王の反撃が来てしまう。
医術の再使用可能までにはもう少し時間かかる。筋肉さんのHP回復にもだ。
リーダーさんの方もウォトカさんの回復を終えられてなさそうだ。せわしない張り扇の音が前回には程遠いことを物語っている。
焦る回復職、思うように攻撃を与えられない前衛も悔しそうに己の獲物を握りしめる。
サルミアッキさんも杖を構え、少しでも時間を稼ごうと詠唱を始めた。
その時、
「わいにまかせとき!とっておきのをお見舞いしたるわ!」
反撃の準備を始めた大魔王の前にお2さんが躍り出る。
幅広の剣を構えて、両足に力を入れ、腰を落とした。
次の瞬間、全身の筋肉がばねのようにしなり、その身体が大きく空へ跳躍した。
大魔王へ頭上から叩き落すような斬撃が放たれ、刃によって付けられた傷口から火の粉が溢れる。
あふれ出た火の粉が橙色から青色へ温度を上げていく。
それとともに大魔王の周囲の空気が炎の熱によって歪みだした。
揺れる景色の中で、お2さんが唇の端を釣り上げて笑う。
「真虎
火の粉は大魔王の羽毛に燃え移り、大魔王は炎上した。
ド派手に燃える大魔王からは、かすかに煙も上がっている。
鴉の焼き鳥は美味しくなさそうだけど、ナイスです!お2さん!
炎上大魔王は反撃よりも己の身体に点いた火を消すことを優先したようだ。
構えていた羽団扇を己に向け直し、扇で招くように雨雲を呼び寄せる。
大魔王に招かれた雨雲は雨を降らせ、その身体に引火した炎を消す。
不思議なことに、この雨は水の当たる感触はすれども、衣服を濡らすことはないようだ。
アイギスのもっふもふな毛も濡れ鼠のように萎れることもなく、膨らんだままである。
大魔王もまた、もふもふの羽毛を持つ身だ。水に濡れるのは嫌だったのだろう。
お2さんとリーダーさんの奮闘により、危険ゾーンへ突入していたウォトカさんの体力も含めて、皆がなんとか次の攻撃も耐えられそうなくらいに回復できた。
「よし!順調!この調子でいくよ!」
大魔王の反撃に大きくHPを持っていかれて対応に追われることはあるけれど、誰もかけることなく順調に大魔王の体力を削れている。
この調子で攻守を繰り返せば、大魔王を倒せそうだ。
医術や応急手当を使ったことで減ったMPをMPポーションを飲んで回復しながら、戦況を整理する。
MPポーションは通常のポーションよりも所有数が少ないが、この消費ペースなら問題ない。
多人数での戦闘における回復にも慣れてきて大幅に減った仲間の体力にも慌てずに対処できるようになってきた。
この調子ならいける!
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