第168話 もふもふの危機
私とアイギス、リーダーさんとサルミアッキさんは敵からの距離もあり、敏捷性も高いので何とか回避できたが、前衛にいた盗賊二人は上手く回避できなかったようだ。
攻撃が少し掠ったようで体力が減っている。
しかし、それ以上に不味いのは逃げ遅れたお2さんとそもそも逃げると言う選択肢を持ちえない筋肉さんとウォトカさんである。
直撃した炎の蛇が四肢へ絡みつき追加ダメージが発生してしまっているのだ。
お2さんに至っては、大蛇が消えた後も火が残り、尻尾の先が燃えている。
「わいのしっぽが~!?」
思わず、お2さんの尻尾へ水魔法を全力投球して、筋肉さんと一緒に応急手当をかける。
幸い、洋杯一杯の水はお2さんの元まで届き、尻尾の火を鎮火した。
「ルイーゼちゃん、おおきに!」
燃える尻尾を抱いて右往左往していたお2さんが禿げる前に救助されて安心したようにお礼を言っている。
もふもふの危機は回避された。それを確認して、急いで筋肉さんへ視線を戻す。
燃えるもふもふに反応してしまったが、私の担当はアイギスと筋肉さんだ。
HPの減少著しい筋肉さんの回復をしないと。
医術をかけて、再度応急手当を使用する。医術の再使用可能までは応急手当を続けよう。
応急手当ならば医術とは異なり、再使用までに必要な時間が短い。
「そこの吞兵衛!次の攻撃は死んでもくらうな!ガチで死ぬからなにがなんでも避けろ!」
リーダーさんも忙しそうだ。筋肉さんの回復が終わったらあっちも手伝った方が良いかもしれない。
前方のあちこちで張り扇の音が響いている。
ウォトカさんの周囲とか連続しすぎて音が重なり、すぱぱぱーんみたいになってる。
さすが鍛えられた本職、
怒号飛び交う戦場でただ一人涼しい顔をした猫がいる。バロンだ。
バロンは回復のために皆が後方へ下がる中、前方へ躍り出て大魔王へ走り寄る。
大魔王はバロンの接近を止めようと小さな旋風を幾つも作り出し進路の妨害をする。
しかし、バロンは猫である。障害物を避けながら進むのは大得意だ。
前足の裏に生えた触毛によって障害物の存在を感知できるし、身体が柔らかいのでぬるぬると液体が流れるように避けていく。
しかも、バロンは敏捷性も優れているのですぐ側で突然発生した竜巻にも機敏に反応してくる。
大魔王への接近もあっという間で、妨害のかいもなく電光石火に走り寄り、大魔王の左膝へのダイレクトアタックをかまして戻ってきた。
大魔王は膝への強撃に右手に握った錫杖で強く地面をついて座り込む。
完全に倒れることはなかったが、片膝はバロンの攻撃によりしびれてしまい、上手く立ち上がれないようだ。
左膝をついた状態でバロンのいる方を睨みすえている。
しかし、バロンさんまで膝を狙うのか。今は緊迫した戦闘の真っ最中だ。
敵に情けは無用かもしれないが、それにしても大魔王が可哀想だ。
だってバロンが蹂躙した膝へ追い打ちするように盗賊コンビもお2さんも攻撃を加えるんだもの。
大魔王ははやく諦めた方が良いと思う。バロンも戦意を失った相手にまで無体は働かないはずだ。
うちの猫だって暴れも鳴きもしなくなった獲物には興味を失って放置するし。
よく夏場に蝉が長椅子の側で放置されているし。知らずに座った私の脚へ救いを求めた蝉が張り付いて私が絶叫するし。
・・・蝉が素足に止まると結構痛いんだよね。それ以上に強襲への驚きが勝るけど。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます