第165話 花言葉は「死んでも離れない」
「散開!」
咄嗟に左右にわかれて龍の突撃を回避する。
幸い、回避の下手なウォトカさんと筋肉さんは元から龍の直線上に居なかったため、直撃は食らっていない。
私とアイギスも龍からの距離があったために回避が間に合い、火傷などは負っていない。
龍が通りすぎた後の熱気を孕んだ風に邪魔をされて目を開けられない。
はやく、直撃はしていないとは言え、ダメージは負っているだろう筋肉さんを回復しないといけないのに。
なんとか瞼をこじ開けて、筋肉さんに医学を使用する。
ウォトカさんへは既にリーダーさんの回復が飛んでいる。おもちゃさんとお父さんにも回復が飛んだようだ。
始めに聞こえた大きな破裂音に次いで、二発重なるように少し小さな破裂音が聞こえた。
お2さんはウォトカさんの背後にいたため、ダメージを受けていないようだ。
お2さんを庇ったウォトカさんはリーダーさんの回復でも戻りきらなかった体力を補うようにお酒、じゃないポーションをがぶ飲みしている。
漆黒のサルミアッキさんは私たちと同じく後衛のため、上手く避けられたようだ。
炎の龍に持っていかれた体力が回復するのを確認した筋肉さんは医学による回復エフェクトが消えるのも待たずに大魔王へ突撃する。その手に斧はない。
「え、斧は!?」
背中の斧は抜かれることなく、拳による攻撃だ。大魔王の巨体へ下から抉るような拳撃が叩き込まれる。
しかし、バロンが攻撃したときのように体勢を崩すことはないようだ。両足ともにしっかりと地面についている。
それにしても、大魔王が飛んでいなくて良かった。もし飛翔されたらバロン以外、攻撃が届かなくなってしまう。
いや、遠距離攻撃なら届くかもしれないので、もしかしたらサルミアッキさんも攻撃可能かもしれない。
「不死の冠、形成せし地錦よ・・・汝が背の君を捉えて絡めて離すな!死んでも離れぬ不滅の乙女!パルセノキッサスの楔!」
なにそれ格好いい。・・・じゃない。当の昔に封印したはずの厨二心が刺激されてしまった。危ない。
なんか格好いい詠唱をしたサルミアッキさんは片手に握った杖で軽く地面を叩いた。
地面につかれた杖の石突から黒々とした蔦のようなものが生える。
蔦は地面を畝りながらも大魔王へと伸びていき、その両手足を拘束するように絡みつく。
手足に巻き付いた蔦はさらに伸びて大魔王の首へと向かう。まさか絞殺。
サルミアッキさんは既に仕事人の仲間だった?
幾重にも巻き付いた蔦が大魔王の首を締めるかと思ったその時、大魔王は両手を天へ伸ばし、絡みつく蔦を引きちぎった。
足に絡まった蔦も同じように力づくで引きちぎっている。しかし、ちぎられた蔦を見てもサルミアッキさんは余裕な様子だ。
地面についた杖を前に押し出し、詠唱を重ねる。
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