第163話 すべてを混沌の闇に隠し・・・・・・


お父さんの白い豹柄の尻尾が歩行に合わせてゆ~らゆら。一定のリズムで右に左に揺れるしっぽ。


なんだか、見ているとうずうず?いや、ねむねむしてくる。というか、ねむい。


しっぽのゆれる動きを見ているとねむけがいやます。だめだー、ねてしまうー。



ひとのうごきを見るからねむくなるんだ。景色を見よう。きれいな景色を見れば目もさめるだろう。


ほら、そこに杉の木が・・・・生えてないね。いつの間にか周囲を取り囲んでいた杉の木がなくなっている。


木のないひらけた場所に出たと言うわけでもなく、後ろを振り返っても木の影も形もない。


なのに何故かどこからか桜の花びらが吹いてくる。風に遊ばれながら桃色の花弁が地面へと落ちていく。


落ちた花びらは地の中へ溶けていき、あっという間に見えなくなってしまう。


もしかしなくても、ボスフィールドに到着したのだろうか。ねむい目を擦りながら、ボスの姿を探す。



水が湧いている。透明に透き通ったきれいな水だ。


皆が固唾を飲んでボスの登場を待つ中、ただ、せせらぎの音だけがその場に響く。


清らかな湧き水に降り注ぐ月光。その青白い光がふっと翳り、色を変えていく。


勿忘草色から白、淡黄蘗、不言色、淡香、黄丹、赤、そして禍々しくも美しい蘇芳へ。


月の色とともに煌々と透明に澄んで輝いていた水に赤黒い濁りが混ざる。


こぽこぽとどす黒い水が湧いている。その水の中から更に黒い何かが湧き出でてくる。



ゴースンエルケーニッヒ Lv.18



意味は大魔王だったろうか。とりあえずおっさんではない。


ハンスを彷彿とさせるような大きさ(とは言ってもハンスの5分の1程)ではあるが、おっさんではない。



「ぃよっし!」


「よっしゃぁああ!」


「良かった!ほんとうに良かった!」



思わず近くにいたおもちゃさんとハイタッチをかわす。続いてお2さん、サルミアッキさんとも。



「すべてを混沌の闇に隠し、己の肉体の壮健さを恨みたくなるような悍ましい光景を見ずにすむ・・・・」



サルミアッキさんが何を言っているのかは理解できないけれど、言いたいことはわかる。


つまり、ハンスの二の舞はごめんだってことだよね?大丈夫だよ。だって今度のボスはハンスと違って筋肉質なおっさんではない。


たとえメタモルフォーゼしても、あそこまでひどい結果にはならないよ。ミニスカはいてもとび出すのはもふもふな足か尾っぽくらいだよ。



大魔王は真っ黒な大きな翼を持ち、真っ赤なお面の鼻は長く、手に持った羽団扇は翼と同じように黒々としている。


大魔王?いや、どこからどうみてもこれは鴉天狗だろう。


修行僧?山伏?のような服装で右手に錫杖、左手に羽団扇を持っている。


その様はまさに鴉天狗の具現化そのもののようだ。



「東が日本妖怪ってのは確定っぽいな」


「これは日本ワンチャン・・・・・」



ウォトカさんとリーダーさんが何か真剣に話し合っている。日本が何とか。


お父さんも加わり、侃々諤々とした様子だ。



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