第161話 我が命の恩人


「ルイーゼ!!」


アイギスの声で我に返り、ポーチの中を漁る。あった!根付があった!


アイギス、これで私たちの生存確率が上がったよ!



アイギスは気が付けばおもちゃさんの肩に飛び移って、私が根付を結びやすいように待機している。


途中、おもちゃさんが魅惑の毛並みを触ろうとしたのを頭突きで撃退していた。


ごめんね、おもちゃさん。アイギスはお触り禁止らしいんだ。



「憑依された後でも根付をぶつければ、解除できたはず・・・・」



なんと狐に取り憑かれても犬の根付を投げつければ、憑依を解除できるらしい。


あれ、もしかして、加持祈禱要らなかった?なくても狐対策はとれるらしいし。


というか、アイギスが取り憑かれた時のあれって・・・・・。



「ルイーゼ!我が命の恩人・・・・・・・・っ!!」



装備に根付を結びつける私の手にすり寄りながら、アイギスが感極まったように潤んだ眼差しで私を見つめる。


気にしないで、アイギス。でも、ちょっと結びにくいからじっとしていてほしい。



「いや、大げさだな!?」



笑ってるけど、おもちゃさん、アイギスは



「アイギスは一度、狐に憑かれてバロンと敵対してるから・・・・・」


「ああ・・・」



そこまで納得されると逆に困るんだけど。いくらバロンでも仲間を屠ったりはしないよ。たぶん。


ちゃんと手加減してくれるはずだよ。きっと。


だから、皆してひどく納得したみたいな顔で深く頷かないでください。



アイギスの分の根付を結び終えたら、忘れずに己にも根付を結ぶ。


この草原犬の根付は犬の首のところに紐が付いているので帯などを身に着けていなくても装備が可能だ。


紐の部分が輪になっているので装身具としても装着可能で、改めて観察すると日ごろから身に着けるものとしてデザインされているのが分かる。


とりあえず、腰のところに結び付けて、歩みを再開する。忘れずに、いつの間にか放り出していた長杖も拾って。



月光が燦爛と辺りを照らしている。風に揺られた草葉が川のせせらぎのようにさわさわと音を立て、反射する月の光が揺らぐ炎のように踊っている。


静かな林の中を私たちの歩く音だけが響いている。どういう訳かモンスターが全く姿を見せない。



なんだか眠くなってきたな。最近の懸念事項が一つ片付き、安心したのも理由の一つだろう。それにモンスターも襲ってこないし。



「・・・・眠そうだな」


「・・・・・子供は寝る時間だ」



静かな周囲を慮ってか、パーティの会話もささやかで、草葉の囁きにかき消されてしまい私の耳には届かない。



「・・・お前は定位置に戻らなくていいのか?」


「ブッ・・・・・転覆しそうな船には乗りたくない」


「盛大に船を漕いでるからな・・・・・」



うおー、ねるなー、ここで寝たらだめだー。おきてー、わたし、起きるのよー。


なんて考えてもねむいものはねむい。長杖を支えに傾きそうな身体を支えているけれど、足だけはひっしに動かしているけれど、ねむい。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る