第160話 狐と狸
「ルイーゼ、落ち着け。あれは狸だ。狐じゃない。それに禁句言ってるぞ」
「はぅわっ!?」
おもちゃさんの言葉に一度深呼吸して気持ちを整える。次いで識別。
識別結果には「ダックスガイストカニーンヒェン」とある。狐は確か「ティガーフックス」という名前だったはず。
つまりはあれは狐ではない。なぁんだ、違うのか。狐じゃないなら良いや。
憑りついたりしないなら、なんでも良い。いや、幽霊やお化けは嫌だけど。ん?あれ?でも、化けるってことはお化けってことじゃ・・・・いや、今はそれよりも。
そっと、頭上の様子を窺う。
「キ・・キキキキキキキツネェ・・・・・・・?」
おう、私の不注意な発言により、アイギスのスイッチが入ってしまった。
小さな身体から大量の禍々しいオーラがあふれ出し、普段の愛らしさが嘘のように凶暴そうな顔へと変貌してしまっている。
「ア、アイギス・・・落ち着いて。あれは違うの!あれは・・・そう狸なの!狐じゃないの!」
「・・・・・・・・」
アイギスは無言でダックスガイストカニーンヒェン(推定たぬき)を見る。
見つめ合うたぬき(?)と兎。親の仇、もしくは因縁の相手にでもであったかのように戦いだしたらどうしようかとドキドキしながら見守る。
視線の集中砲火を浴びたたぬき(?)は軽快な音を立て煙と共に姿を変えた。
焦げ茶色の身体に太い縞々尻尾が見えたと思った瞬間に反転し、その場を立ち去る。
あっという間に姿を見失い、しばし呆然としてしまった。狸速い。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・なぁ~んだ、たぬきか。なら、良いや」
アイギスの方は狐ではないと分かった途端に邪悪なオーラを引っ込めて、毛づくろいを始めている。可愛いアイギスちゃんが戻ってきた。
「たぬき速ぇな・・・・」
横では私と同じく、狸の速さに唖然としたおもちゃさんがいる。
おもちゃさんは暫く、林の奥へと消えていった狸の後ろ姿を眺めていたが、徐に振り返り、にやりとこちらを見て笑った。
「お前ら、ティガーフックスが怖いのか?」
にやにやと意地の悪そうな笑みだ。おもちゃさんは知らないのか。あの狐は取り憑き攻撃をしてくる凶悪な妖怪なんだよ。
「だって取り憑いてくるし・・・・・」
憑くていう、もう字面だけで怖い。
「きつねの憑依って防止アイテムなかったっけ?」
「狐に附憑された空け者は犬神の力で救うことが出来ると言われている」
?つまり、どういうことだってばよ。えーと、狐の取り憑き攻撃を防ぐアイテムが存在していて、そしてそれは犬神の力を宿しているってこと?
犬神ってわんちゃん?草原犬の根付なら持ってるけど、これでどうにかならない?
「あー、そうそう。犬の根付を装備してると狐の憑依を防げるんだよ、たしか」
!?本当に!?え、え、草原犬の根付は確かポーチの中にまだいくつか残っていたはず。
アイギスの頭にぶつかってしまった奴は皹が入って使えなくなってしまったけれど、後日、バロンが草原で鬼ごっこした分がポーチに入っていたと記憶している。
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