第155話 何かの儀式?


「えー?なに?俺の回復じゃ不満?」


リーダーさんが張り扇で賛同した人たちを順々に指し示していく。



「せやかて、回復の度に爆発音が響きよるし」


「ちゃんとポーション飲んでるのにハリセンでどつかれるし」


一人目に指名されたお2さんは回復時の張り扇の音が不満な様子。


私も耳元で回復の度に張り扇の爆裂音がするのは嫌だな。お2さんの言い分はよく分かる。


次に示されたウォトカさんはポーション飲んで回復しているのに張り扇で追加の回復をされるのが嫌らしい。


うーん、でも、ウォトカさんの場合はポーション(ほぼお酒)による回復がダメージ量に追いつかなくてリーダーさんのフォローを受けてるみたいだしな。


それにたぶん、張り扇で叩いてるのは戦闘中の飲酒に対するツッコミの意味もありそうだし。



「つーか、ハリセンで叩かれて回復するのが腑に落ちない」


おもちゃさんの言葉に一同無言でうなずいた。


どうやら、張り扇で回復するって意味が分からないと思ったのは私だけではなかったようだ。


皆、張り扇で回復する現象に首をかしげながらも、他に選択肢もないので黙って享受していたらしい。



「俺らマゾじゃないんだぞ・・・・・」


ああ・・・。そういう趣味の人たちなら叩かれて回復するのも納得できる。


おもちゃさんたちは違うらしいけれど、叩かれて喜ぶ人にとっては張り扇で回復も常識なのかもしれない。


かくいう私も猫パンチで回復したことあるし。いや、バロンのじゃなくて、現実のだけれども。


バロンの猫パンチはたとえ手加減されたとしても死ねる自信がある。



「何故か俺のスキルは物理寄りになるんだよねぇ」


リーダーさんはおもちゃさんたちの抗議をまるっと聞かなかったことにして、張り扇を手のひらで弾ませながら嘆いている。



「ルイーゼちゃんは慣れてないだろうし、そんなに多くは見られないでしょ。と言うことで、お前らは俺が担当します~。ルイーゼちゃんの担当は筋肉と従魔ちゃんたちだけです~」


リーダーさんの決定を受けて、筋肉さんがまたポーズを変更する。


両肘を直角に折り曲げて、こぶしを突き上げたポーズ。力こぶを魅せつけるポーズだろうか。


盛り上がった力こぶをおもちゃさん、お父さん、お2さん、漆黒さんが順々に叩いていく。


何かの儀式?そういう宗教でもあるの?



「村の外に出るよ!配置について」


リーダーさんの号令に合わせて好き勝手に散っていた面々が隊列を組んでまとまる。


盗賊のお父さんと盾役のウォトカさんを最前列にし、最後尾に奇襲対策で索敵もできるおもちゃさんとお2さんを配備した陣形だ。


私はおもちゃさんの前、私の更に前には漆黒のサルミアッキさんとリーダーさんがいる。


筋肉さんは変動式?最前列でポーズをきめているなと思ったら、そのまま動かずに最後尾に追いつかれ、走って最前列に移動したと思ったら、また固まっている。


どうしよう。動き回る相手に回復をかけたことないんだけれど、ちゃんとできるかな。


幸い筋肉さんは見たかんじ走っている時でもそこまで速くないので落ち着いて冷静に着実に回復をかけよう。



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