第154話 筋肉の像
ちなみに、便宜上ドワーフと呼んでいるが、正確にはドワーフという種族はキャラクタークリエイトの選択肢にはない。
獣人の中にドワーフによく似た種族がいるのでドワーフと呼んでいるだけである。
正式な名前はシミズとかヒミズとかだった気がする。
「筋肉はポージングに夢中で逃げも避けもしないから・・・・・」
話題に出された筋肉さんは今も筋肉ポーズをきめている。
今度のは胸筋を魅せつけるポーズなようだ。いや、もしかしたら三角筋を魅せるポーズかもしれない。
なんかもう兎に角、肩の盛り上がりが凄い。
「最近、とうとうスキルまで取得したし・・・・・」
筋肉さんは敵の攻撃がきてもポージングをしたまま動かな過ぎて、ポージング中のみ防御力が上がるスキルを獲得したらしい。
その名も「筋肉の像」。現在は木の像しか選べず、防御力の上昇も微々たるものなのだそう。
戦闘中にお酒がぶ飲みするらしいウォトカさんより先にスキルを手に入れるって、どんだけ~。
「ポージングに夢中な筋肉が死なないように見といてやって」
「・・・・了解です」
私の了承を受けてなのか、別の理由があるのか筋肉さんのポーズが変わる。
これは前にも見た上腕二頭筋のポーズだ。
「筋肉・・・ルイーゼは筋肉語を習得してないから伝わらないぞ」
おもちゃさん、筋肉語って何?もしかして、筋肉さんのポーズって何かの言語なの?
え、ジェスチャー?言葉だと言うのなら手話の方か?
「筋肉からよろしくって」
「え?あ、ハイ。よろしくお願いしますデス」
もしかしなくても、おもちゃさんは筋肉語を履修済みなのか。
周囲の様子からしておもちゃさん以外のパーティメンバーも履修済みっぽい。
どこで学習できるんだろう筋肉語。ウィーキャンで習えるかな。
「俺も回復はルイーゼが良いな~」
「リーダーさんの方が回復上手いと思うけど・・・・」
お酒ポーションを飲むことに命かけてそうなウォトカさんとポージングに全霊を費やす筋肉さんを含むパーティの回復役をこなしていたリーダーさんの回復スキルは鍛え方が違うと思う。
私のアイギス専任回復スキルでは回復量も回復のタイミングの見極めも不十分な気がする。
「問題なのは上手さじゃないんだよ」
「それな」
しかし、リーダーさんの回復スキルと私の回復スキルには、スキルの使い方や回復量以外の何か明確な違いがあるらしい。
私は違いの分からない女だけれど、お父さんもお2さんも、皆違いの分かる男なようだ。
おもちゃさんに追従する声があちこちから上がる。
筋肉さんは無言でマッスルポーズを決めただけなので賛同しているのか分からないけれど、たぶんそうだろう。
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