第153話 酒飲んでれば何とかなる


「中途半端に自己回復盾気取って死にかけさえしなければね」


ウォトカさんはリーダーさんからそっと目をそらした。


しかし、回り込まれてしまったようだ。そらした視線の先にまわりこんだリーダーさんはウォトカさんの顔面を鷲掴んで話し合いを始める。



「回復いらないって言っといて死にかけたの何回あったっけ?」


「それは・・・・」



自己回復盾と言うのは自分で回復しながら盾役をこなす盾のことだ。


つまり、ウォトカさんは何かしらの回復スキルを持っているのだろう。


しかし、何度も死にかけると言うことは回復スキルの育成が上手くいっておらず、ダメージ量と回復量が釣り合っていないのだろう。


でも、スキルは使わないと成長しないし、難しいところだな。



「吞兵衛の酒瓶、あれ、中身回復薬なんだわ」


「え?」


「酒と回復薬の混合物」


おもちゃさんから告げられた酒瓶の中身にすわ冤罪だったかと焦ったが、結局酒瓶の中身はお酒だった。


ポーションと混ぜ混ぜしたお酒だった。ウォトカさんはそこまでしてお酒を飲みたいのか。



「あいつあれ造るために薬師系も鍛えてんだ・・・・・・」


そこまでしてお酒を飲みたいのか。お酒INポーションにウォトカさん以外の需要があるとも思えないので自分で造るしかなかったのだろう。


でも、そのために貴重なスキルポイントを費やしてまで薬師のスキルを磨くとは恐るべし執念だ。



「——だからスキル鍛えるにしても、時と場合を考えろって言ってるの!」


「しかし、ボス戦は良い飲み時なんだ」


「どいつもこいつも、ボス戦くらいはまじめに戦え!」


「俺は酒飲むためにドワーフになったんだ!」



おもちゃさん曰く、ウォトカさんはウォッカを飲んで自己回復するスキルか、


もしくはポーションと同じ効果を発揮するお酒を造り出せるスキルがはえるように修行中なのだそう。


現在はお酒と混ぜても何とか効果を発揮するポーションをつくることしかできないらしい。


そのため、はやく欲しいスキルがリストに出現するように、戦闘中はダメージを受けまくってお酒(ポーション入り)がぶ飲みしているのだとか。


ボス戦でも、強敵相手でも気にせず修行続行するのでウォトカさんが死にかけるのは日常茶飯事だと言う。


「酒飲んでれば何とかなる」と言って無茶ばかりするので、よくリーダーさんに怒られているらしい。リーダーさん、お疲れ様です。



「騒がしくしてごめんね、ルイーゼちゃん。こっちの問題児は俺が見るから、あっちの筋肉は頼んだよ」


戻ってきたリーダーさんとウォトカさん。ウォトカさんのお鼻はお酒を飲んだせいだけではない赤みで真っ赤である。


いや、ドワーフの鼻は元から赤かったかもしれない。


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