第152話 リーダーの張り扇


「ルイーゼちゃんは俺と同じ回復系の職なんだっけ?」


「はい」


リーダーさんの質問にひとまず答えてから、浮かんだ疑問に首をひねる。


俺と同じってどういう意味だろう。まるでリーダーさんが回復職のような言い方だ。


リーダーさんはジャマ―、敵の妨害やデバフ(バフの反対。敵を弱くする)を担当しているんじゃないの?



「ちなリーダーは聖職者な」


リーダーさんの張り扇を凝視したまま動かない私にウォッカさん、ウォトカさん?あれ吞兵衛さんだっけ?・・・・お酒さんが教えてくれる。



「リーダーはあのハリセンで気合入魂・・・じゃなくてHP回復をしてくるんだ。・・・・・・・・・ついでに精神分析(物理)も」


ますます困惑する私におもちゃさんから追加の説明が入る。しかし、説明を聞いたのに理解が追い付かない。


張り扇で回復ってどういうこと。想像できないんだけど。逆にダメージを負うのでは?


いや、張り扇は叩かれても痛みはない。ダメージも負わないのか?


そして精神分析、なんか変なの付いてるけど私も持ってるスキルだ。おそらく精神系の異常を解除してくれるスキル。



「え、えーと、私も精神分析持ってます。おそろいですね」


よく理解できなかったので、無難な方向に逃げる。



「回復足りてなかったから助かるよ~」


7人パーティで回復役が一人と言うのは確かに少ないと思う。


しかし、私は普段アイギス専用の回復役なので、ちゃんと回復役としての役割を全うできるだろうか。


バロンやアイギスもふもふ見てて他の人のHPがピンチなことに気づかなかったとかならないように気をつけないと。



「とりあえず、ルイーゼちゃんには筋肉のことを頼んだよ」


筋肉さんは今日もマッスルポーズをきめている。


もうそろそろ村の外に出るけれど、背中の斧をぬく様子はない。やはり拳で殴るのだろうか。



「うちは速さがあるやつ多いから、できる限り回避して攻撃をしのぐ方針なんだよね」


犬、じゃない狼獣人なリーダーさんに、猫科二人、おもちゃさんも盗賊と聞いたから速いのだろう。


リーダーさんの言葉通り、速そうなパーティだ。



「ただし、例外が二人いてね」


例外。おそらく一人は筋肉さんだ。話の流れ的にも見た目的にも。


本来身体の大きさと速さは本比例するものだし、筋肉は重いものだ。


筋肉の塊な筋肉さんはきっと速度も遅いはず。もう一人はウォトカさんだろうか。


ドワーフには足の遅いイメージがそこはかとなく。それと、飲酒による千鳥足で上手く避けられない可能性もある。



「うん。正解。そこの吞兵衛が鈍足の一人だよ」


「俺は盾だからな」


うん。盾役のウォッカさんは敵の攻撃を受け止めるのが仕事だから、足が遅くても、攻撃を避けられなくても、問題はないだろう。


でも、ウォトカさんの主張を聞いたリーダーさんの目が据わっているので、何か差し障るような事情ありそうだな。




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