第150話 不屈と孤高の大杉
楽器の演奏禁止と言うことは村の中で鼓舞のスキルを発動したら怒られるのだろうか。
安全地帯の中だし、戦うこともないだろうし、使う機会もないだろうが気をつけないと。ズィーボルトの村では鼓舞禁止、覚えておこう。
「絵がある・・・・」
運河沿いの芝生の上をお散歩気分で歩いていた私たちの視界に一つのキャンバスが映りこんだ。
煉瓦色の壁に埋め込まれたキャンバスの中には花火の絵?が描かれている。
青い空が大部分を占める絵の真ん中に緑色の葉をつけた大きな木を配置し、その左右に花火、
いや、大きな星?らしきものが描かれた絵は見ていて不安になってくる。
まるですべてが燃えているようだ。蜃気楼のようにゆらゆらと道も家も何もかもが形をゆがめている。
見ていると段々、真ん中の木が天高く燃えさかる篝火のように見えてくる。
緑色の炎がゆらゆらとゆらゆらと移ろいながらも燃えている。
「何だっけか、これ・・・・たしか有名なやつだ」
絵画の前でおもちゃさんが首をひねっている。
「不屈と孤高の大杉だろう!すばらしい!」
漆黒のサルミアッキさんがローブの裾を大きく翻しながら叫ぶ。
そのままぶつぶつと呪文のように解説をしてくれたけれど色々な意味でよく分からなかった。
「・・・・厨二語は大人になると理解できなくなるな」
「昔は理解できたのかよ」
「・・・・・もしかして、あれが混沌語」
「あほか」
おもちゃさんたちのふざけ合いを聞き流しながら、村の中を通り抜ける。
それにしても、おもちゃさんたちのパーティは仲が良いな。気軽にふざけ合える気さくな関係と言うか、気の置けない仲と言うか、見ていてなんだか羨ましくなる。
まぁ、でも、私には最強可愛いもふもふな仲間たちがいるから。うん、寂しくなんかないよ。本当だよ。
ボス討伐を一緒にする上で、パーティ申請は歩いているうちに済ませてある。
おもちゃさんたちの7人パーティに私たち3人が加わり、これでパーティの最大人数10人となった。
1パーティが最大10人って多い気がするけれど、おもちゃさんたち曰く、ボスが強すぎるからこれでも足りないくらいらしい。
私たちのパーティの場合は余波で死にさえしなければ、バロンがどんな敵でも倒してくれるので何とかなってきた。うん、余波で死にさえしなければ。
ラスボスのいない通常パーティでは火力不足に悩まされたり、火力があっても敵の攻撃に耐えられずに全滅してしまったりすることが良くあるそうだ。
特にハンスは耐久力がある上に、攻撃力もあって、しかも速いので奴の前には屍の山が築かれたのだそう。
私たちも必死に避けていたけれど、飛んでくる余波で死にかけて回復が大変だった記憶がある。
バロンの攻撃にもかなり耐えていたし、もう一回遊べるドンっとか言う地獄の二回目があったから死を覚悟した。
ハンスに対して火力も防御力も足りないというのはよくわかる。
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