第144話 邪悪なオーラ
お米に執着する人からしたらお米ともち米、ご飯と赤飯では雲泥の差があるのかもしれないけれど、
かなり最初期に赤飯が手に入るのだからそんなに必死でお米のために日本を探さなくても良いんじゃないかな。
そうのんびりと思った私と違い、おもちゃさんは急に緊迫した雰囲気を醸し出す。
「赤飯だって!?それどこで手に入ったんだ!?」
「え?普通に・・東の草原で・・・・・・?」
おもちゃさんの慌てぶりに驚きながらもポーチから赤飯を取り出す。
?なんだか、思ったよりも赤飯の所持数が少ないような。
東に進む前、食料などの必需品を買う前に東の草原でバロンが散歩()した時にはもっとたくさん「草原狐の赤飯」がドロップしていた気がする。
その時の戦利品はパンを手に入れるために手放してしまったが、その後、東に出発する直前にも同程度の時間、草原で遊んでいた。
あの時のバロンは狐よりもわんこに夢中で狐はあまり相手にしていなかったけれど、代わりにアイギスが執拗に狐を攻撃していた。
総合的にみれば、倒した数はそんなに変わらないはずだけれど。
「草原狐の赤飯・・・・あの狐、赤飯なんて落とすのかっ・・・・・!?」
私から件の赤飯を受け取ったおもちゃさんが驚きを隠せない様子で赤飯を天に捧げている。
なんで?天に捧げるほど赤飯が好きなの?東の草原で幾らでも手に入るだろうに大げさだなぁ。
いや、それよりも、おもちゃさんの口から出た例の言葉のせいでアイギスが豹変してしまった。
「キ・・・き・キキキキキ・・・キツネェ・・・・・・・」
邪悪なオーラが噴出している。やはりまだ狐への怒りを昇華できてないんだ。
アイギスの前で狐は禁句。アイギスを近くの花壇の上に置き、そっとおもちゃさんに耳打ちする。
「おもちゃさん、それは禁句ですっ・・・・アイギスの前でその言葉はだめ・・・・!」
「お、おう。でもなんて」
「やつのことは虎さんもしくはお虎ちゃんで」
禁句についておもちゃさんと認識を共有し、声の聞こえない位置に待機してもらっていたアイギスを迎えに行く。
アイギスはもう狐とは鳴いていなかった。代わりにまるでこの世の終わりと言うような悲壮な声で鳴いていた。
え、アイギスどうしたの?
「キュ————ッ!!」
見れば、街灯に飾られた花々の中からアイギスが必死に手を伸ばして助けを求めている。
その隣には無言でアイギスを見つめるバロンがいた。
無意識にお花に埋もれる二匹が見たいと言う願望の元、バロンの隣へアイギスを添えてしまっていたようだ。
急いでアイギスを頭上に避難させて、謝る。お花に埋もれる二匹の愛らしい姿は、目の保養にはなったがアイギスの心労が大きすぎるので駄目だ。
そのうちアイギスが倒れてしまう。私の欲望よ、自重しろ。
再度の謝罪にアイギスは無言で私の髪の毛を噛んだ。頭上で髪の毛を噛み噛みされている。うん、本当にごめんね、アイギス。
「・・・・・虎さんか・・・・あいつ、この先には出ないんだよな・・・・・」
おもちゃさんが赤飯を掲げたまま何かぶつぶつ言ってる。
かろうじて聞き取れた言葉によると、先に進めば例の虎さん狐は出ないらしい。それは朗報だ。
「なぁ、赤飯ドロップした時に何か特別な行動しなかったか?」
「特別?」
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