第134話 猫大好き


「で、件の探索者は死に戻った瞬間に元従魔に攻撃されて、再度死に戻ってる間に逃げられたらしいぞ」


「それは従魔を大切にしなかった、その人の自業自得だね」


「せやな」



私たちには関係のない話だろう。信頼関係はばっちりだし。そうだよね、バロン、アイギス。


名前を呼ばれたアイギスは頭上で身じろぎによって返事をしてくれたけれど、バロンは一瞥をくれただけで他に反応はもらえなかった。


猫だもの。人の話なんか無視するよね。知ってた。



「・・・猫だから言うこと聞かないのか、神話生物だから言うこと聞かないのか、判断の難しいところだな。猫の従魔を他に聞かないし」


「猫って珍しいの?」



街中で猫を見かけることもあった気がするけれど、従魔としての猫は珍しいのだろうか。


他所の猫を見つめているとバロンが凝視してくるから、きちんと観察したことがないのだ。


猫って他所の猫を触ると吃驚するぐらい怒るし、バロンも怒りそうだから他の猫は見て見ぬふりを心掛けている。


だって、バロンてば穴が開くんじゃないかってくらいじっと見てくるし、気になっても観察なんてできない。


識別も見つめないと使えないため、使用したことがない。そもそも街中での使用は誤って人に使ってしまったら申し訳ないので控えているしなぁ。



「俺が知る限りでは、今のとこ、猫のモンスターは日本探索組が必死に叩いてるボス猫くらいだなぁ」


『それは——』


猫のボスモンスターもいるんだ。猫とは闘いづらいな。そう思っていた、その時、私たちの会話に割り込むようにバロンが現れた。



『猫をいじめる集団がいると言うことか!?』


「ぅわ!?」


それまでは私の隣に残像を残しながらフィールドを駆け巡っていたのに、突然、前方を遮るように現れたバロンにおもちゃさんが飛びのくように驚いている。


私たちを先導していたおもちゃさんは、そのまま私の背後に回り、隠れるように身を縮こまらせた。


体格差的に大部分がはみ出ていると思うけど、バロンもおもちゃさんも気にならないみたいだ。


いや、バロンは気にしているかもしれない。無言のまま、私の陰に隠れるおもちゃさんを見つめ続けている。


その瞳孔が獲物を見つめる時のように開いていて、少し緊張する。



「えーと?バロン、落ち着いて?急にどうしたの?」


『猫に無体を働く狼藉者がいるのだぞ!?黙ってはおれん!!』



猫が傷つけられて怒っているようだ。バロン、猫大好きだったのか。


今まで敵に猫はいなかったから知らなかった。街中の猫にはそこまで反応してなかったのに。


でも、街中で猫をいじめる人なんて見かけなかったから、それで反応しなかったのかも。


言われてみれば街で猫を見かけた時のバロンの目は優しかったような?いや、気のせいか?なんか猫によって反応が違ったような・・・。



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