第132話 敬称をグレードアップ
「・・・つーか、猫強すぎねぇ?」
話の間中、ずっとバロンを目で追っていたおもちゃさんがとうとう疑問を口に出した。
その間バロンはモンスターを見かけた瞬間に猛スピードで走って突っ込んでいき、私たちがモンスターの種類を確認する間もなく爆発四散させて、
惚れ惚れするようなドリフトテクニックで速度を落とすことなくUターンして戻ってくることを繰り返していた。
なんかもう早すぎてずっと近くにいるように見えた。そして、途中からアイギスが恐怖に震えだして落ち着かせるのが大変だった。
「・・・猫、強すぎるよねぇ」
バロンが強すぎることには全力で同意する。
バロンはボス以外のモンスターはほとんどワンパンで倒してしまう。
他の探索者の戦闘をあまり見たことがないため、比べる対象は乏しいが、それでもわかる圧倒的な強さだ。
「・・・・・もしかして・・神話生物?」
「神話・・・?」
神話生物ってなに?神話に出てくる生き物のこと?
アダムとイブに林檎を勧めた蛇とか地獄の門をまもる三つ首の犬とか神武天皇を大和国へ導いた鴉みたいな生き物のことだろうか。
「あ、あ~・・・バロン、さん・・・様とはチュートリアルで会ったのか?」
「うん。そうだけど、よくわかったね」
バロンが強すぎておもちゃさんの中でバロンの敬称の等級がどんどん上がっていく。
「チュートリアルでヤバいのに会って何故かテイム出来てしまった変じ・・・人が何人かいるからな」
なんと私以外にもバロンのようなラスボス?をテイムした探索者がいたらしい。
それなら掲示板で知られても炎上しないだろうか。
今までは運よくあまり探索者の多いフィールドに行き当たらなかったが、これからは探索者でごった返すような場所に行くことになるかもしれない。
その時にバロンが目立ってしまって大炎上を巻き起こしたらと不安だったが、他にもいるなら平気かもしれない。
ところで今変人って言いかけなかった?
「私はただモフモフに抱き着いたけだし・・・・」
「でっかい猫に?」
「いや、猫だか人だか分からない何かだった。・・・よく覚えてないけど」
お前それでよく抱き着いたな、と言わんばかりの胡乱気な眼差しで見られてしまった。
ナビさんに気に入られるために触手語りをしたおもちゃさんには言われたくない。
「・・・死ぬ前にいっそひとモフしたかったんだよ・・・・・たぶん」
チュートリアルでの出来事は正直あまり覚えていない。
なんかとにかくモフモフした何かをもふりたい衝動が爆発して、めっちゃもふもふした記憶しかない。
そういえば私たち以外の誰かがいたような?気のせいだったろうか。
「ひと当ての類語かよ・・・・神話・・あー、チュートリアルで会ったのなら、バロ・・・猫様の名前の横に従の文字がないのも一緒か?」
バロンの名前を呼ぼうとした時に偶然、黄金の瞳とかち合ってしまったおもちゃさんが敬称をさらにグレードアップした。
でも、猫様って敬っているのか微妙じゃない?バロンの方はすぐに逸らされた目線を気にすることなく爆走を続けている。
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