第120話 へんてこな像
石像であっているのだろうか。
かろうじて人の顔らしきものが付いているのは分かるが、いや、しかし、あれは人なのか?
体の方もなんだかよく分からない格好をしており、何故このようなおかしな格好の像をつくろうと思ったのか製作者に聞いてみたいような石像だ。
この格好にどのような意味が?あと周りに落ちている縄っぽいものは何?
明らかな人工物ではあるものの作者は何を考えて作ったのか理解ができず、何を表しているのかも分からない、総体的な見解は奇妙な像である。
『何をしておるのだ?』
へんてこな像を前にしてポーチを漁り出した私にバロンがおかしなものでも見るような目を向けてくる。地味に傷つく。
「これが、道祖神とか祠なら素通りするのもどうかなって思って・・・・」
こんな不可思議な神様がいるのかとは思うものの、人間の尺度で神仏の類をはかることなどできないとも思うし、神様の前を素通りするのも座りが悪い。
私の職業、巫女だし。
巫女だからと言って、この石像の神様?と私に何か関係があるわけではないだろうけれど、旅先で出会った道祖神にはお参りをするものでしょう。
と、いうわけでポーチから適当にお供え物を取り出す。ちょうどポーチの中に食べる勇気を蓄積中の油揚げが入っているのだ。
ちょっと狐の隠し持っていたおやつらしき油揚げを食べるのは迷うなぁと思ってポーチの中で寝かせる予定だったし、
売りに出そうにも一個しかないので売りにくくて困っていた油揚げを消費してしまおう。
石像に近づいてみて、その周囲に落ちていた縄らしきものがしめ縄だったことに気が付いた。
しめ縄に囲まれていると言うことは、やはり祠や道祖神の類だろうか。神様に関係する何かなのは間違いないだろう。
石像の前に油揚げを供える。こういう時の参拝の仕方は神社と一緒で良いのだろうか。
たしか二礼二拍手一礼だっけ。いや、しかし、ここはファンタジー世界。
しめ縄に惑わされて和風な神拝を思い浮かべたが、洋風に十字架を握りしめて跪いたほうが良いのだろうか。
何という難問だ。
もうお供え物は置いてしまったというのに神拝の方法が決められない。
と、とりあえず礼だ。お辞儀をして挨拶をしよう。その後はとにかく合掌して拝んでおけばお参りしようとした心は伝わるはず。
ぱんと音を立てて合わせた手を組み、祈りをささげる。
ちゃんと東の大国へつけますように。そして何よりも夜になるまでに今日の宿へたどり着けますように。
夜のフィールドでは絶対に活動したくないです。お願いします。お化けこわい。
閉じていた瞳を開ければ、供えた油揚げが消えている。
?手を合わせたからごちそうさまの魔法が発動したのかな。
このような、なかなか人が通りそうにない場所に食べ物を放置して腐らせるのも不安だったので丁度良い。
合わせていた手を離し、一礼して去ろうとしたところで、石像が何か玉のようなものを持っていたことに気が付いた。
よくよく観察してみると、その玉には模様のようなものが描かれており、その模様は黒い鳥を表しているようだった。
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