第119話 どこかの方向音痴なお兄さんのように
「ねぇ、ルイーゼ。これってどこに向かっているの?」
一人、悶々と自分の世界に没頭していると、頭上に乗ったアイギスが周囲を見渡しながら不思議そうに聞いてきた。
曲名が気になりすぎて周囲への注意が散漫になっていたようだ。
いけない、気をつけないと。ちゃんと前を見て歩かないと、まっすぐ歩いているつもりでぐにゃぐにゃ曲がって一周してしまうかもしれない。
どこかの方向音痴なお兄さんのように。
「え、うん?東に向かっているはずだよ・・・・?」
ちょっとずれてるかもしれないけれど。
外部のまとめサイトで情報収集を行った結果、東の大国は中央からだいたい真っ直ぐ東に進むとたどり着けるらしい。
その情報を得たまとめサイトも西の大国への道中には蛇を探して徘徊する妖怪が出るという訳のわからない噂を記載していたので、何処まで信じて良いものか迷うが。
まぁ、東の大国への行き方はそのサイトだけでなく他のサイトにも同じような記載があったから大丈夫だろう。
西の大国にも同じように西へ進んでいたらたどり着けたことだし。
考え事に夢中になって注意力散漫になっている間に東に進むルートからそれていても困るので、メニューから地図を取り出して確認する。
「ふおっ!」
地図上に超個性的現代アートが描かれていた。どうりで、アイギスが心配して声をかけてくるわけだ。完全に迷子である。
蛇行に蛇行を重ね、ナスカの地上絵でも描こうとしたのかというような記録が登録された地図を読み解いて、どっちに進んだら東に進めるのか考える。
えーと、進んできた方向がこっちだから、東はあっちかな?
本当に一周二周と東以外の方向に向かって方向転換してしまっていたので自分の向いている方角がどっちだか判断がつかなくなって地図を読むのにも一苦労だ。
しかし、この地図は向きが固定されていて、常に北が上を向いているので、えーと道路がここにあって駅が後ろで建物があっちだから地図の向きは・・・とか地図を回さなくても良い。その点は確かる。
「ん。東はあっちだね」
念のため、地図は閉じずに出したまま、東に向けて再出発する。
色々なことに飽きたバロンがその辺に落ちてた石で石蹴りをしながらついてくる。
石蹴りの才能も持って生まれたらしいバロンは器用に前方へ石を蹴り飛ばし、私たちの前へ進み出たと思ったら、少し立ち止まって私たちの到着を待ち、また石を前方に蹴り飛ばしている。
間違えて変な方向に蹴ってしまわないあたり、本当に器用だ。
とことで、バロンさん、その石ってモンスターの方の石?それともそうじゃない石?どっち?
まぁ、モンスターの石なら蹴った瞬間に光の粒子になりそうだから、きっと普通の石だろう。
いくらバロンでもモンスターの石で石蹴りするような虐めじみたことはしないよね。
どことなく不安に思いながらも眺めていた石が前方へころころと転がって、何かに当たる。
何だろうあれは石像?
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