第116話 見鬼


アイギスに丁度良いスキルを知らないか聞いてみようと試みて、背後に阿修羅を背負う姿にびびってそっと視線をそらした。


遠い国に旅立ってしまっているアイギスにスキルのことを聞くのは無理そうだ。


もしかしたら私の取得可能スキルの中にもそれっぽいスキルがあるかもしれない。アイギスが正気に戻るまでの間に確認しておこう。



何かないかな~。あ、スキル候補に「見鬼」の文字を見つけた。


たしか、見鬼って幽霊やお化けが見えるようになる才能の事じゃなかったっけ。見えない狐を見つけるのに役立ちそうだな。


でも、このスキルを取るのは、絶対、嫌だ。幽霊もおばけも見たくない。


あ、いや、でも、見えないのは見えないで怖いな。だって、そういうスキルがあるってことは居るって事だよね?


気づいてないだけで、すぐそばに昨日の狐みたいな見えない何かがうじゃうじゃ潜んでいるかもしれないって事だよね?


うー、う、うー、やだー、みたくないー。でも、きになるー。



『なんじゃ、急に・・・・』



突然唸り出した私にいつの間にか側に戻ってきていたバロンがうろんげな眼差しを送る。


おかえり、バロン。ひと暴れしてすっきりした?入れ替わりでアイギスが荒ぶってしまったので少し待っててね。



「・・・だって、見鬼とかいうスキルが候補に出たんだもん」


『それがどうした?』


「・・・・・おばけ怖い」


『見なければ良かろう』


「・・・居るのに気づかないのも怖い」



ため息つかないでよ、バロンさん。



『取ってしまえ』


「でも・・・」


『魑魅魍魎の類なんぞ、我がすべて駆逐してくれるわ」


「おお!!」



やだ、バロン格好いい。素敵。猫の中の猫。もふもふキング。漆黒を纏いし夜の帝王。闇の世界の覇者。一生ついていきます。


惚れ惚れするほど立派な胸毛をふくらませて宣言するバロンに惚れてしまいそう。好き。



ゴーストバスター・バロンの実力を信じてスキル取得を決める。


いや、ここは和風なスキル名に合わせて妖退治屋バロンとでも呼ぶべきだろうか。それとも陰陽師バロン?霊媒師バロン?


一瞬、お化けのことで取り乱してしまい当初の目的を見失ってしまったが、探していた特定のスキルがないと見つけられないモンスターを見えるようにするスキルを取得できたのでヨシ。


これでアイギスが狐を見つけられなくても、代わりに私が見つけて警戒できる。


いや、でも、見鬼で見えるようになるのはお化けや幽霊だけだろうから、このスキルを取ったからと言って狐を発見できるとは限らないのか。


憑依と聞いて、お化けや幽霊を真っ先に思い浮かべていたが、別に狐がそういったものとは限らない。


もし、狐が隠密系のスキルを使っていたり、ポッターさんの透明マントを被っていたりして隠れていたとしたら見鬼では見つけられないだろう。


逆に見鬼で見つけられたら狐はお化けや幽霊の仲間だったと証明されるわけで・・・。


あ、どうしよう。見つけたくなくなってきたな。アイギス、アイギスちゃん、お願い代わりに見つけて。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る