第113話 犯人はキツネ
休眠から目覚める条件は不明だが、水魔法で水をかけたくらいでは起きないらしい。
一定以上の威力の攻撃を加えると起きるのか、それとも他に条件を満たさないと起きないのか、
実際に攻撃して確かめるような無謀さは持ち合わせていないので休眠中の石を刺激しないように距離を取って座りなおす。
急な移動に膝の上で蕩けていたアイギスが驚いたように見上げてきた。
「どうしたの?ルイーゼ」
「え、あ、うん。・・・思わぬところにモンスターがいるかもしれないから気をつけないとなって思って・・・・・」
いるかもというか、実際にいたのだけれども。
休眠中らしいのでアイギスには伝えなくても良いだろう。吃驚して今朝のように跳ね起きてもかわいそうだ。
「そうだね。この間の敵、僕も接近に気づけなかったし・・・・」
「アイギスも?」
アイギスは私よりも早く敵の奇襲に気がついて守ってくれることも多い。
西の砂浜で人を小ばかにした苛つく栗鼠に奇襲をかけられた時にもアイギスは私よりも早く気が付いて栗鼠から私を庇ってくれていた。
そんなアイギスにも気づかれずに私の頭上にいたアイギスにスキルをかけた敵がいるとは、もしや索敵系の専用スキルがないと見つけられない敵がいるのだろうか。
「見た目は可愛かったのに、あの狐も油断ならないよね」
「きつね?」
「そう。狐」
実を言うと昨日の襲撃犯の正体は判明している。
事件の前後で増えたドロップアイテムが存在するからだ。
事件が起こる前には確かに持っていなかったアイテムが事件後にポーチの中を確認したら入っていたのだ。
そのアイテムにより襲撃犯は虎の要素がないのに虎の名前がついたあの狐であることが分かっている。
「あの後、ポーチの中に『草原狐の油揚』ってアイテムが増えてたから、アイギスを操った犯人は狐で間違いないと思うよ」
昼間にバロンが狐を倒しまくった時に手に入ったアイテムの中に「草原狐の油揚」は存在しなかった。
昼間の狐から入手できたのはおやつなのかお供え物なのか気になる「草原狐の赤飯」と狐との関係が類推できない「草原狐の包帯」である。
おそらく油揚は夜限定のドロップ品なのだろう。
そしてあの夜に倒したモンスターは姿を確認することかなわずバロンに倒された襲撃犯だけである。
「そう・・・きつねが・・・・・」
そう呟くとアイギスは突然、私の膝から降りてゆらりと立ち上がり、四本の足に力を入れて草原の草を踏みしめた。
そのまま後ろ足で力強く大地を蹴り、勢いよく草原へと飛び出していく。
あたりにはアイギスが大地を踏みしめた時の銃弾のように鋭く大きな音が響き渡り、音に驚いたウサギたちが一斉に散っていく。
「アイギスさん・・・・・?」
明らかに様子がおかしい。
昼間だと言うのに、耐性スキルを取得したというのに、まさかまた狐の術中に嵌まってしまったというのだろうか。
これは、想定よりもずいぶん早く加持祈禱の効果を試す時が来てしまったようだ。
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