第112話 俺に触れると怪我するぜ


私が医術や応急手当を使っていない場合の私たちパーティのそれぞれが攻撃される確率は最前線で攻撃するバロンが6割、私の前に出て守ってくれるアイギスが3割で残りの1割が私だろうか。


これが私が回復行動をとった場合、バロン3、アイギス4、私3くらいに変化する。


回復をかけた私が2割ほど上昇するだけでなく、アイギスも1割ほど上昇する理由はアイギスが私とモンスターの間にいるからなのかアイギスが回復行動の対象だからなのかは検証できる材料が他にないため不明である。



わがパーティの攻撃を一手に引き受けるバロンと私の狙われる確率が一度の回復で同じになるのだ。


回復役はモンスターに狙われやすいと言えるだろう。


そんなただでさえ狙われやすい回復役が不用意に攻撃に参加したらどうなるか、敵の標的になる確率が爆上がりすることは子供でも分かる火を見るよりも明らかだ。


そのため水魔法の水球に攻撃力があるのかどうか私が知る機会は訪れることないだろう。



しかし、水球に攻撃力があろうとなかろうと私にはあまり関係がない。


だって、攻撃はバロンがいるので必要ないし、そもそも回復役の私に必要なのは攻撃力ではないし。


どちらにせよ水魔法のレベル上げは必要だろう。容器一杯分の水では満足に消火活動も行えない。


それに、水魔法を鍛えればそのうち火耐性とか熱耐性を付与する魔法を覚えられるかもしれない。


今できるのはその辺の花に水やりをするくらいだが、いつかきっと水魔法が役に立ち時が来てくれるはず。



その時を夢見て近くにあった石に水魔法をかけてみる。少し色の濃くなった石の表面が陽の光を受けててらてらと輝いている。


バロンのおこした春疾風によって光の粒子となった石もあったけれど、私の水魔法では何の変化も見受けられない。


何となく識別してみて気が付く。モンスターだ、この石。



デイナハトシュタインホイネン Lv.7 休眠中



え、いや、本当に?でも、識別結果が完全にモンスターのそれだし。え、でも、え?


試しに目についた鬱金香の花に識別をかけてみるが、「鬱金香。王冠のような簡易で美しい花が咲く植物。微毒」と表示されてレベルの表記などはない。


クーゲカニーンヒェンとか何たらアイフのように、やたらとかっこいい横文字も出てこないため、鬱金香は私の知っている鬱金香と変わらないものと思われる。



今度は近くに転がる石に片っ端から識別をかけていく。


「デイ(以下略)休眠中」「苔の生えた石。わびさびを感じる」「デイ(以下略)休眠中」「とんがった石。俺に触れると怪我するぜと言わんばかりな石」「丸い石。どこまでも丸い形状の石」「デイ(以下略)休眠中」「石。没個性な石」・・・・・etc.



草原に落ちている石のすべてがモンスターという訳ではないようだ。


石の識別結果が独創的過ぎて必要以上に識別を使った調査によると草原の石の3割ちょっとがモンスターであり、モンスターの石はすべて休眠状態にあるようだった。



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