第105話 黒い残像と花火


私たちに今必要なスキル・・・。画面に並ぶ取得可能なスキルリストから草原を駆け抜ける暴走猫に視線を移す。


真夜中にバイクの爆音を響かせる暴走族よりも危険な走行を繰り返すバロンは加速に加速を重ね、黒い残像を追いかける爆風でしか認識できなくなっている。


辻斬りのごとく通り抜けざまに攻撃を浴びた哀れなモンスターたちが哀愁漂う悲鳴と共に爆発四散していく光景を花火みたいだなぁ遠い目で眺めた後に目の前の画面に意識を戻した。


意味もなく癒しが欲しくなり、両の手で頭上にしがみ付くアイギスをモフる。とっても良い感触。



モンスターの悲鳴をBGMにしながら画面に連なるスキルを読み流していく。


攻撃力はバロンがいるため必要ないとして、防御力が、特に物理的なものではなく魔法やスキルに対するものが不足しているかもしれない。


思い出したくもない昨夜の恐怖体験もスキルによっていいように翻弄された結果とも受け取れる。


スキルの発動を阻害するスキルや状態異常などにかかりにくくする耐性スキル、状態異常を解除するスキルなどを取得すると今後のために良いかもしれない。


憑依とか操り攻撃などに有効なスキルがリストにあれば良いのだが、毒や混乱などの状態異常と比べると少し特殊な気がする憑依などの解除スキルは取得可能リストに出現する条件も特殊な可能性がある。


毒や混乱などと同じスキルで対応できたら嬉しいのだが、スキル数の多いこのゲーム、別々のスキルが用意されている可能性が高い。


いや、もしかしたら、毒と混乱も別のスキルが必要な設定の可能性もある。そうなったらスキルポイントが湯水のごとく消費されていくな。



流し見た感じ、状態異常に効果がありそうなスキルは「毒消し」「解呪」「加持祈祷」と「精神分析」も行けそうかな。


それから、あとは「薬学」もだろうか。


こうしていくつかのスキルを抜き出してみた所感だと、やはり、一つのスキルでは解除可能な状態異常にも限りがありそうだ。


毒消しとか、これ、毒にしか効きそうにないしなぁ。



現在のスキルポイントは16。スキルによるけれど一つのスキルを取得するのに必要なポイント数は5前後である。


そのため、今の貯蓄なら3つほどスキルを取得可能だ。



リストに挙がっているスキルの中で一番昨日の惨劇に対抗できそうなのは解呪だと思うのでひとまず解呪を取るべきだろうか。


しかし、加持祈禱も気になるところでもある。



画面を睨みつけて悩む私の視界に魅惑的な真っ白なふわふわが映りこむ。


なんかすごい手触りのよさそうなふわふわしたものが二つ私のおでこのあたりで揺れているのだけれど、一緒に画面が見たいのかな、アイギス?



私の頭の上から画面をのぞき込んで両耳が私のおでこをくすぐっているアイギスを膝の上に移動させて、アイギスにも画面が見えるようにする。


アイギスは私が取得候補としてチェックしたスキルたちを見て首を傾げた。


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