第104話 サービス追加
『・・・・・』
私がわざとゆっくり歩いていることに気が付いたバロンが胡乱気な眼差しで下から睨めつけてきた。
サービス追加ありがとうございます。
すぐにお開けしますのでもう少々お待ちください。もうちょっとこの可愛いおててを近くで眺めたいんです。
『疾くせよ・・・・』
「きゅ!?」
扉に添えられた前足に限界まで顔を近づけてにやにやする私のおでこをバロンは呆れたように前足で押した。肉球タッチ!!
更なるご褒美をもらってしまい、これ以上待たせると怒られそうなので大人しく扉を開ける。
途端に発射されるバロン一号。吹きすさぶ春疾風をものともせずに草原を勢いよく駆け巡る。
突風に飛ばされないように必死に踏ん張っていた動物たちだけでなく、草も花も石ころまでもが疾風迅雷なバロンの走りに振り回されてなぎ倒されている。
あ、バロンの起こした風によって地面に落ちていた大きめの石が転がりながら光の粒子となって消えていった。
まるでモンスターのような消え方だ。というか、バロンったら、石まで壊してしまって、草原が何もない平地になってしまったらどうしよう。
無残に散った
先程バロンが私の頭を小突いたが、その時、私の頭上にはアイギスがいた。
アイギス視点では先程の光景が自分のすぐそばにバロンの魔の手が振り下ろされたように見えたわけで。
アイギスが私の頭上でバイブレーションモードに突入してしまったのだ。
大丈夫だよ~。怖くないよ~。アイギスの頭を優しくなでて落ち着かせようと試みるも、震えは当分治まりそうにない。
命がけの土下座をした夜の記憶が生々しい今、バロンの視線ひとつで尋常じゃない怯えを見せるアイギスだ。
震えを止めることはあきらめて片手でアイギスをなだめるように撫でながら、もう片方の手でステータス画面を操作する。
スキル取りが色々あって未だに保留のままとなっている。そろそろほんとに何かとらないともったいない気がする。
このゲーム通常のレベルアップに必要な経験値とは別にスキルの習熟度とも呼べる経験値も存在する。
ナビさんはスキルの内容は教えてくれなかったけれど、スキルの使い方やスキルレベルのあげ方は説明してくれた。
ナビさん曰く、常時発動型のパッシブスキル以外の手動で発動するアクティブスキルのレベルを上げる方法はスキルの経験値を貯めることなのだそうだ。
スキルの経験値はスキルを使用することで獲得できる。
しかし、スキルの使用によって一律で同じ量の経験値を得られるわけではなく、探索者の行動などによって変わるらしい。
詳しい法則などは自分で体験して見つけなさいとのことだったが、ゲームをはじめる上で大変ためになる話だと思い覚えている。
そんなナビさんの言っていたスキル経験値のこともあるため、スキルポイントを死蔵したままにするのはもったいないと思うのだ。
とは言うものの、下手なスキルを取っては今度はスキルポイントがもったいない。
ここは慎重に今必要なスキルを見極めなければ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます