第78話 狐が隠し持っていたおやつ

前回のあらすじ

・わんちゃんフォーエバー

・草原でひき逃げ事故多発

・被害者はウサギ・アイ〇ル犬・お虎さん(狐)

・アイギスの好物はあったか十字パン

・太ったら死亡フラグ







東の草原でたくさん遊んで満足げなバロンを引き連れ、大量の戦利品と共に冒険者ギルドへやって来た。


ちなみに、東の草原のモンスターからは「草原兎の肉」「草原兎の尻尾」「草原狐の赤飯」「草原狐の包帯」「草原犬の爪」「草原犬の根付」が手に入った。


この他に、ポーチの中には西の大国への道中で手に入れた素材もたんまり入っている。


これらを売り払って、醸ジュースとあったか十字パンを買い溜めしよう。



冒険者ギルドの受付は今日も大中小な三人が担っているようだ。私は当然、真ん中のアリアさんの受付へ並ぶ。


お久しぶりのアリアさんも変わらず美人だ。どこまでも澄んだコバルトブルーの瞳に淡いプラチナブロンドの髪。


青と白の制服が持ち前の清楚さを引き立てて、青地に黄色い縁取りのスカーフが差し色として映えている。



受付三人組は揃いの制服に各々のイメージカラーなのか違う色のスカーフや小物を身に着けている。


お色気系お姉さんは紫紺に蘇芳の縁取りで、格好良いお姉さんは濃紺に藤納戸色の縁取りのスカーフを巻いている。


皆、それぞれよく似合っている。



「次の方~」


アリアさんに見惚れている内に順番が回ってきた。


「ルイーゼさん!」


「アリアさん。お久しぶりです」


現実の感覚では久しぶりと言うほど空いていないが、ゲーム内の感覚では間が空いている。


なので挨拶はこんにちはではなく、お久しぶりにした。



「お久しぶりです。今日は依頼のご報告ですか?」


「はい。維持依頼の報告と買取をお願いします」


そう言って、カウンターの上に鷲やら狐やら蛇やらのドロップ品を並べる。爪や牙、毛皮などの各種素材だ。


食材関係は草原兎の肉を除いてとっておくことにする。いつかレストランに持って行って調理してもらおう。ジビエ料理食べたい。


ドロップ品の中で食べられるのは、蛇肉と鷹の爪と鶏肉と、赤飯・・・赤飯?東の草原の狐が赤飯を落としていた。


どういう事なの。油揚げならおやつ用に懐に隠し持っていたとも考えられるけれど、ポーチに入っているのは赤飯である。


狐って赤飯も好きなの?どっちにしても、狐が隠し持っていたおやつを食べるのは勇気がいるなぁ。



「あの・・・・ルイーゼさん・・・若い変わった形の櫂を持った船守の船に乗りませんでしたか?」


猛然と机の上に積まれたドロップ品を処理していたアリアさんが言い淀みながら尋ねてきた。


変わった形の櫂を持った若い船守と言ったら、もしや、西の大国へ出発する前に乗せてもらった方向音痴のお兄さんだろうか。


持っていた櫂が変わった形だったので記憶に残っている。


しかし、変わった形の櫂を持っているのがあのお兄さんだけとは限らないので合っているのか不明だ。



「少し・・・・いや、かなり・・・・・・方向音痴の船守なんですけど・・・・」


「あ、乗りました」


方向音痴の船守はたぶんあのお兄さんしかいない。何回か船には乗っているけれど迷子になったのはあのお兄さんだけだ。



「やっぱり!猫を連れた銀髪の女の子って聞いて、もしかしてって思ったのよ!・・・ごめんなさい、ルイーゼさん。うちの若いのがご迷惑をおかけして」


「え、あの・・・・」


方向音痴のお兄さんの事でアリアさんに謝られる理由が分からない。うちの若いのってどういう事。


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