第76話 煽り運転、ダメ、絶対 *バロンによる犬いじめあり
許す。これはもう許すしかない。飼い主が手元の画面に夢中になっているとつい足元にすり寄りたくなっちゃうんだよね。
うんうん、よくある。犬猫あるあるだ。飼い主には許す以外の選択肢はない。仮令書いていた長文全部吹っ飛んでも許すほかない。だって可愛い――
「きゃうんっ!」
私の視線の先でうるうるなわんこはお星さまになった。
「これもモンスターだ。気を抜くな」
「・・・・ハイ」
バロンは私のことを思って私の安全のためにわんこを倒してくれたのだ。だから頬を濡らすこれは涙じゃない。
仮令涙だとしてもそれは感謝の嬉し泣きなんだ。わんちゃん、フォーエバー・・・・・
「・・・・・なでる?」
転んだ体制のまま地面に座る私の隣によって来たアイギスが小首をかしげて聞いてくる。ありがとう、アイギス。ちょっとモフらせて。
進化したアイギスの毛並みは増量しただけでなく、柔らかさもあがっている。
かき分けてもかき分けても地肌にたどり着かない程、長い毛が毛並みに沈めた指を受け止めてくる。これが進化の力か。進化ってすごい。
アイギスに癒されながらもバロンに視線を向ければ、草原の徒競走が再開されていた。
バロンに追われて必死に逃げるわんこが煽り運転の被害にあっている。
ギリギリまで距離を詰めてきたと思ったら、急に減速し、また急に加速する。そして隣を並走し、当たりそうな程に近くへと寄ってくる。
その間、わんこはずっとバロンのギラついた瞳にロックオンされ続けている。怖っ!?見ているだけでも怖い。煽り運転、ダメ、絶対。
バロンの狩猟本能は当分静まりそうにないな。いろいろと諦めてアイギスに視線を戻す。
気のせいか先程からバロンが執拗に犬に狙いを定めているような気がするが、きっと偶然だ。でなければ犬の特殊能力が厄介なのだ。きっと、そう。
そう言えば、この辺りのモンスターではないと思うが、フォースさんたちにアイギスの装備を強化してもらうために必要なムレアを探しているのだった。
草原のモンスターで識別をかけたのは
犬と狐は識別していない。
えーと、まず犬の名前が「シュインバイレアイフ」?名前までアイ〇ルに似ているな。アイ〇ル犬って呼ぶことにしよう。
それで、狐の方が「ティガーフックス」?意味は虎狐だろうか?どう見ても狐だけれど、どこかに虎の要素があるのか。
色?しかし、黄色は元々の狐の色だし、虎模様でもない。もしかして、虎のような性格の狐なのかもしれない。
バロンから逃げる様子はひ弱な小動物然としているけれど。しかし、相手がバロンでは仕方がない。本物の虎さえも怯えさせそうなラスボス猫だもの。
狐のことは親しみと激励を込めて虎さんと呼ぼうか。でも狐なら女の子かもしれないのでお虎さんの方が良いだろうか。
「アイギス、葉っぱ食べる?」
草原に青む草の芽を摘まんでアイギスに見せる。これは形からして山根草だろうか。
生で食べるには苦すぎるかな。指を放し、近くにあった白詰草の葉を摘んで差し出す。アイギスは若葉の匂いを少しだけ嗅いで首を振る。
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