第74話 しびびびびっ


「バロンは発酵したものが好き?」


宿船で買ってきた料理に舌鼓を打ちながら、バロンの好みを探る。


「発酵物・・・というより、酒じゃな」


「お酒・・・・・」


なんとバロンの好きなものはお酒らしい。さすがバロンさん、大人~。でも、バロンって自称子猫じゃなかった?


バロンは猫だけど猫じゃないし、子猫だけど子猫でもないから問題ないのか。



「まぁ、酒の中でも葡萄酒が一番じゃが・・・」


葡萄酒が買えるのは何処だろう。屋台では見かけなかったし、西の国でも見た記憶がない。


もし今度見かけたら、樽ごと購入してバロンに献上しよう。



・・・ところで、アイギスは何をしているの。


醸ジュースを飲むたびに、炭酸でしびしびして、また、口をつけてしびびびびってなっている。


飲むのをやめないということは気に入っているということだろうか。見ている分には面白いけれど、身体に異常はないんだよね?


ステータス画面を開いても、特にHPが減っている様子もないので大丈夫なのだろう。遠征用の飲み物に醸ジュースも加えようかなぁ。



そんな風に検討した夜から、草原へと意識を戻す。


草原では依然、バロンが楽しそうに爆走している。今度は運動会を始めたようだ。


縦横無尽に草原を駆けまわり、楽しそうに走っている。


進路上にいた哀れな犠牲者たちがバロンに撥ね上げられて、ひき逃げされているのが視界の端に映る。



アイギスが後ろの惨状に気づかないように耳を覆う手に力を入れなおして、草原から視線を逸らす。


そう言えば、ステータスの確認が途中になっていたな。次にとるスキルはどれにしようか。



ルイーゼ Lv.10 巫女見習い

        HP 100%

        MP 100%


     称号: ナビさんのお気に入り

       猫の女王様


     スキル: テイム 従: アイギス Lv.10☆

                    バロン

         識別

        応急手当

        水魔法

      医術

         鼓舞

      候補(木魔法、火魔法…etc.)


スキルポイント:16



アイギスのスキルとの兼ね合いもあるからどうしようかと画面をスライドさせて、見慣れぬ星マークを見つけた。


アイギスの名前の隣にあるこれは何ぞ。識別、は使えなかったから、指でつついてみる。



アイギス Lv.10 進化可能候補: ウォーパルJr.

      ウィルターJr.

      ダビット



え、進化?アイギス、もう進化できるの?でも、候補が皆人名ぽいのだけれど。誰よ、ウィルターとかダビットって。


ジュニアがいるってことはウォーパルさんとウィルターさんは既婚者なの?


いや、進化先ってことはこれが種族名なのかもしれない。識別も使えないし、どれを選べばいいのか決められそうにないぞ。



悩んでいる内にアイギスのレベルが一つ上がった。そして進化先の候補に「モーントカニーンヒェン」なるものが追加された。


カニーンヒェンはアイギスの今の種族名、クーゲカニーンヒェンのカニーンヒェンと同じだろうか。モーントは何だろう。聞いたことないな。



「アイギス。モーントカニーンヒェンになってみない?」


画面に表示された文字を指さしながら、アイギスに聞いてみる。


アイギスは瞬きを繰り返した後、こくりと頷いた。おそらく了承してくれたのだろう。



進化先の中からモーントカニーンヒェンを選択する。


一つだけ進化に必要な条件が異なっていたことから、他の進化先とは違う特殊な進化形態なのだろうと予測した。



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