第73話 肉食獣な兎さん

掲示板まとめ

・おもちゃの大冒険

・祠の前でびっくりするほどユートピア

・探索者たちは大きなカラスに追い回された

・にゃ…様は爆笑中










クロウさんと西の大国への冒険話で盛り上がっていたはずが、突然の恐怖体験で心臓が悲鳴を上げている。


日を挟んで東の草原で東風こちに身を任せる今も思い出すだけで心臓がうるさい。ああ、吃驚した。



私たちが西へ旅立つ前には蕾だった鬱金香チューリップも今では満開を迎え、赤や黄色、桜色の花が風に揺られて何度もお辞儀をしている。


鬱金香に埋め尽くされた草原でアイギスたちウサギクーゲルカニーンヒェンは何を食べて生きていたのか不思議だったが、鬱金香の葉に隠れるようにして芽生える草の芽の姿に納得した。


ちゃんと他の植物も存在するらしい。鬱金香は微量だが、毒を持っていると聞いたことがあったので、


毒草を食べて生きてきたのか、もしくは肉食なのかと心配していた。


草原にはウサギクーゲルカニーンヒェン以外にも何かもふもふした生き物がちらほら目視できるので、あの狐?犬?たちを食べていたのかと不安になっていたのだ。


まぁ、アイギスはお肉も食べるけれど、調理済みを食すのと野生で丸かじりするのとでは衝撃も雲泥の差なので。


アイギスが中身肉食獣な兎さんではなくて良かった。



風車を背に暴れまわるバロンを眺めながら物思いにふける。


バロンは元気に草原のもふもふ達と鬼事に興じている。


楽しそうに興奮するバロンに反比例して決死の形相から絶望の虚無顔へと変化していくモンスターたちが哀れで同情を禁じ得ないが、


バロンのために犠牲となってもらおう。南無。



アイギスに故郷の草を食べさせてあげたかったが、同族が狩られる現場を目撃させるのも忍びないので、一緒に風車小屋前で待機してもらっている。


殺戮に気づかれぬよう視界と耳は私の手で塞いでいる。


ごめんね、アイギス。バロンの狩猟本能が静まったら故郷の草をたらふく満喫させてあげるからね。



出発前には使用中の看板で溢れていた運河の船宿にも幾らかの空きが生じ、昨日は街のボートハウスに泊まることができた。


ボートハウスの中は外見からは想像できない程に広く、ダイニングキッチンに大きなベッドの並ぶ寝室が複数あり、


これなら1パーティで共有して使用するというのも納得と言うほどの空間を有していた。


私たちの場合は、猫と兎と猫獣人の3人パーティなのでかなりのびのびと寛ぐことができた。



食事は自分たちで調理するなり、屋台で買い食いするなり、各自で用意する必要があったため、初日にしたように屋台に繰り出した。


珍しくバロンから醸ジュースの注文が入り、屋台を探し歩く。


探していないときには普通に見つかるのに、探している時に限って見つからないのってなんでだろうね。


あんまりにも見つからないものだから、途中、以前にも食べた、あったか十字パンにアイギスが反応を示したので購入した。


その後、さて、捜索に戻ろうとしたところで後ろから醸ジュース売りのおじさんに声をかけられ、徒労感を味わう。数十分探し回っていたんだけどなぁ。



醸ジュースは以前購入した容器に入れてもらった。


再使用可能な丈夫な硝子製の容器なので、容器に入った状態で購入するとそれなりの値段がする。


しかし、容器を持っている場合は中身のみの購入が可能で、価格も大分経済的だ。



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