第55話 アンコールを熱願
アン…何とかの宿のように満員ということもなく、無事に宿を見つけられた次のログイン日。
風光るうららかな天気が心地よく、小鳥たちの囀りが耳になじむ朝。やる気に溢れた私は今日の予定を挙げていく。
まず、綾錦の広場に行ってクロウさんへのお土産を買う。
その時にギックリオお爺さんがいないか確認して、お爺さんに会えたらフォースさんたちの工房へ連れて行ってもらったお礼をする。
その後に工房へ頼んでいた装備を取りに行き、クロウさんの待つ始まりの広場へ転移する。
綾錦の広場から始まりの広場への移動は簡単で、噴水の前で移動先を選択すれば登録した広場に行けるようだ。
ログアウト前に噴水を調べたら移動先を選択する画面が出てきた。
現在登録されているのは始まりの広場と綾錦の広場のみのため、転移できるのもその二つだけだ。
早く残りの東南北の大国へたどり着き、転移を開放したい。そのためにも、装備を整えて、お土産をゲットしなければ。
お土産になりそうなものが買える場所は宿の人から聞いている。
広場に面する白い大きな建物、フォースさんたちの工房に行く前にギックリオお爺さんが立っていた建物に物販店が集合していて、屋内市場になっているそうだ。
あそこで買えないものはないとのお墨付きをもらったので、いろんなお菓子を買い揃える野望が募る。
「美味しいもの、いっぱいあると良いね」
もふもふ二匹に話しかけながら、広場へと続く路地を歩く。
広場のように赤々としておらず、どちらかと言うと白色の多い通りだ。
屋根の色が紅か翡翠色で見上げた空に花が咲いているように感じる。
今日の朝ご飯はビスケットだった。あまーい苺ジャムかチョコとナッツのペーストをつけながら食べた。
宿のおかみさんのお勧めはカプチーノに浸しながらとのことだったが、バロンと私がコーヒーの匂いを受け付けなかったため、ミルクティーをいれてもらった。
猫だからかな、コーヒーの匂いがすごく苦手に感じる。なんとなく嫌いなにおい。
ビスケットを軽く摘まんできただけなので、広場にある屋内市場で食い倒れツアーを開催するつもりだ。
この国に来てイタリアンな料理が続いている。今から行く市場の一角がジェラートに占拠されていてももう驚かない自信がある。
というか、ジェラート食べたい。
屋内市場を収容する白い建物は横に長い石造りで、幾つもの小窓のアーチが模様を描いており、青碧色の三角屋根が山岳のように連なっている。
三階建ての建物で吹き抜けになった通路から上を見れば硝子窓の向こうに白く雲が揺蕩う春天が覗く。
そして、さっそくジェラートのお店を発見した。二階にも三階にもジェラートのお店はあるようだ。
雛菊の花のように紅白に可愛らしい色合いのジェラートもあれば、赤、白、黄、緑、青、紫、
どれも美味しそうで目移りしてしまう。
「ベリー系・・・チョコも捨てがたい・・・緑のも美味しそう・・・・・」
抹茶とか緑茶系だろうか、
マスカット味でも美味しそうだな。見た目からジェラートの味を想像するだけで楽しい。どれから食べよう。
『好きなものを選べ』
バロンは私の肩に置いていた顎を上げ、額を一度頬に寄せた後、目を瞑って自らが選択に関与しないことを宣言。
バロンさん、今のもう一度お願いできますか。唇に当たった冷たい耳の感触が最高でした。アンコールを熱願します。
「とりあえず緑のジェラートからいってみようか?」
その次は紅白の模様を織りなす奴にしようかな。ジェラートの食べ歩きに沸き立つ私の頭上でアイギスが身じろいだ。
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