第53話 かば焼き食べたい


フォースさんたちは納得してくれたらしく、装備の形を考え始めている。


「ウサギ型か・・・首輪かハーネスか・・・・」


アイギスは耳を倒してお尻のあたりの毛を少し逆立てる。嫌なんですね。分かりました。



「首輪は嫌みたいです」


「拘束されるのが嫌なのか?」


「ブッ」


「そうか」


考え込んだ様子のフォースさん。えーと、こちらはいつも先に話している方の、フォースさんだ。


追従する方のフォースさんは上から下から矯めつ眇めつアイギスを観察している。


時々、自らの指とアイギスを見比べて何かを確認しているようだ。



「使えそうな素材を出しな」


と、フォースさん、先に話す方。印象的にこちらが年長っぽいので仮にフォース兄さんと呼ぼう。



目で示された台の上にアイテムポーチの中の素材を置いていく。


わしの素材は爪が使えるだろうか、たかの爪は無理だろうな。



ついでに霜蛇のポーチを取り出して、中の素材を移し替えていく。


「おい、羽も出しとけ!皮もだ、皮も!」


途中、フォース兄さんから、使えないだろうと仕舞った素材の一部も台に乗せるよう指示されながら、ポーチの中身を整理する。



鷲鷹の羽に蛇の皮、栗鼠の牙と尻尾、ワンちゃん湿原狼の牙、皮、魔石…だと思ったら、魔石じゃなくて火打石だった。


識別では「湿原狼の炎」という名前で「どこでも簡単に火を起こせる」とある。


あの狼、氷属性じゃないの?フロストウォーカーの効果付きの靴をくれたし、本人、本狼も足元の水を凍らせていた記憶がある。


それなのにドロップ品に「炎」があるなんて違和感がすごい。あ、湿原狼は金属も落としていた。


あれこそ鍛冶に使えそうな素材だ。忘れずに台の上に出す。



霜蛇の素材も出していく。皮と牙と髭?なんか釣り竿もドロップしている。


蛇じゃなくてうなぎかなまずだったのだろうか。


一本釣りの天然うなぎ。かば焼きにしたら美味しいだろうな。


しかし、見た目は蛇に相違なかった。ならば味も蛇なのだろうか。


蛇ってどんな味なのだろう。美味しいのかな。



ふっかふかのうな重に思いを馳せてから気づく。あの大蛇、毒がありそうだったなと。


うん、諦めよう。小さい羽の生えた方の蛇から、砂漠蛇の肉なるものが手に入っているので、それで満足しよう。



「袖なしの羽織るタイプにするか…袖はあっても良いか?…腕に着ける装身具は?」


フォース兄さんはアイギスと台の上の素材を見比べながら構想を練っている様子だ。フォース弟さん?は紙に何かを書きつけている。


アイギスの装備だし、フォース兄さんとアイギスで意思疎通ができるのなら二人の話し合いで決めてもらうのが最適かな。



そう結論付けてアイテムを移し替えた霜蛇のポーチをアイテムポーチの中にしまおうとしたが、できなかった。


霜蛇のポーチはアイテムポーチと似たような効果のアイテム、というか上位互換のようなアイテムだ。


収容アイテムの時間停止の機能と見た目より多く入る収納量を持つ。


アイテムポーチには収納量に限りがあるのに対して、霜蛇のポーチには制限がない。


蛇の装飾が施された留め具が付いており、閉じると蛇が自らの尾を咥えているように見える。


大きさはそう大きくなく、ポケットに入れようとすれば入れられるが、ポケットに物が入っていると動きにくくなりそうで気が進まない。


アイテムポーチに入れようとしても、霜蛇のポーチにアイテムポーチを入れようとしても奇妙な抵抗感があり、入れられない。


類似アイテムだから収納できないのだろうか。



「・・・・・貸しな」


霜蛇のポーチを片手に途方に暮れていたらフォース弟さんに声をかけられた。


普通に会話が可能だったことに驚きつつも、言われた通りにポーチを渡す。



「使うぞ」


「あ、はい」


フォース弟さんは台の上の「丈夫な縄」を取り、ペンチのようなもので挟んで炉に押し込んだ。え、燃え!?



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