第45話 綾錦の広場

掲示板まとめ


・「そんな装備で大丈夫か?」「大丈夫じゃない、問題だ」

・東のボスが強い!でも、北のボスも強い!そうだ、生産職に装備を発注しよう。

・生産職「見た目重視でつくるぜ!」探索者たち「協力するから性能上げて」








まず目の前には門。両脇の建物の間をふさぐような壁に二つのゲートが開いており、その上にサーカスのピエロのような塔が二つ並んでいる。


蘇芳の下地に白枠の小窓の縞模様の入った服を着たピエロである。黄緑色というか黄色みがかった青緑色の帽子を被っている。



振り返れば、噴水。


イギリスの庭園にありそうなお洒落なアーチに囲まれた八角形の噴水だ。


赤茶色の縁の中、茶色の水を吹き出す部分が中央に設置されている。


大きなお皿が一枚と上に小さなお皿が一枚付いた二段階方式の吹き出し装置だ。



蔦が絡んだアーチの支柱に寄り添うように薄い赤紫色の花が鈴なりに咲いた木が四本植わっている。


四枚の花弁がそろった小さな花が枝の先に密集して実る見た目からして、おそらく紫丁香花ライラックだ。


ふんわりと甘く優しい香りが漂ってくる気がする。



「こんなところで、なにをぼっさとしとる」


背後からかけられた声に驚き飛び上がりかけた。視線を向ければ、そこには偏屈そうなお爺さんがいた。



「ぅえ、ごめんなさい!」


「きょろきょろと忙しない。どこの田舎もんか」



眼光鋭いお爺さんに思わず背筋を伸ばして答える。


「さっき、この国に来た探索者のルイーゼです!綺麗なところなので見とれてました!」



その言葉を聞くとお爺さんは少し雰囲気を和らげて頷いた。


「着いたばかりの探索者か・・・ふんっ、なら仕方ない。この綾錦の広場は美しいからな。見惚れるのも仕方ない」



綾錦の広場。名前まで流麗なところだな。


しかし、本来は秋に来る場所だったろうか。西、白虎、司る季節は秋。


道中のモンスターは強くなるけれど、景観は秋が見ごろの可能性が高い。


いや、でも、紫丁香花ライラックも綺麗だし、春の景色も見ごたえあるな。



「儂はゴーキ・ギックリオだ」


そう言って、噴水の方を一瞥して言葉を続ける。



「荘厳な噴水だろう?植わっている木は豊かな水と多量の実り、健やかな命を表しとる」


へー。綺麗な噴水だなぁと思っていたけれど、そんな意味があったのか勉強になる。



「で、いつまでここで時間を無駄にする気だ?」


ギックリオお爺さんの顔がまた険しくなってしまった。


移動したいのは山々だけど、どこに行けばいいのかサッパリ。


紅色の建物ばかりで各々の役割が判断できない。



「冒険者ギルドってどれですか・・・?」


「なんだ、迷子か。・・・ギルドはそこの赤い建物だ」


ギックリオお爺さんは門の方を指さす。ありがとうございます。


でも、赤い建物で説明されると付近の建物すべてが赤いんですが。




どれだか分からない様子の私にお爺さんはさらに詳しく言葉を足してくれる。


「ほら、あれだ、あの門の左側にある赤いの…」


「あ!あれですね。ありがとうございます」


お爺さんにお礼を言って立ち去ろうとしたが、そう言えばこの国の名前を聞いていない。



「あの、この国の名前って……」


「お前さん、名前も知らん国に旅して来たんか……」



う、いや、ゲームってそういう物でしょ?VRMMOでは着いてから国とか街の名前が分かるのは普通でしょ。



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