第22話 一晩中ドーマンセーマンした
「ところで、ルイーゼさん」
「はい」
「その子は新しい従魔ですか?」
「はい」
なぜだろう、嫌な予感がする。
「では、従魔の登録をお願いします」
そう言って取り出されるのは例の機械らしきもの。
「キシャーーっ!」
その姿を認識した途端、全身の毛が逆立ち鳥肌が立った。
「落ち着いてください。これが動くのは初回登録の時のみです」
「・・・・・・・・・本当に?」
「はい。それ以外で動いた報告はありません」
アリアさんは私の疑いの眼差しにも動揺せずに断言した。
「・・・・・・・」
だからと言って私の覚悟が決まるわけではない。自慢じゃないが、相当なビビりの自覚がある。
ホラーCMを見ただけで怖くて一人じゃ寝られなくなったこともある。両目から血を流した女の子が窓を叩いていてすごく怖かった。
「にゃー・・・」
私がビビり伝説を思い返している隙にバロンがまたしても裏切り行為を働く。腕がバロンによって押し出され、例のブツへ近づき、真上に手が――
「ブゥーブゥー」
懸命に危険物から離れようとする手の上にウサギさんが華麗に着地。
ブルータス、お前もか!
ウサギが軽いから手に大した衝撃はないが、例のアレに、触って、しまった。
「――っ」
総員対ショック!身構える私を嘲笑うように沈黙を貫く機械()。
「・・・・・?」
「はい。更新完了です」
アリアさんが更新されたギルド証を手渡してくる。
動かない?本当に動かないの、この機械()?
アリアさんからギルド証を受け取りつつもヤツから視線はそらさない。
騙されない。私は騙されないぞ。
アリアさんにお礼をして、冒険者ギルドの出口へ向かう。
ヤツは沈黙を保っている。
冒険者ギルドを出る、その時、
「――っ」
ギルドの前で呆然と立ち尽くす。
『どうした?』
バロンが不思議そうに見上げてくる。
その顔可愛いな。でも、それどころじゃない。
「…今、動いたよね?」
『は?』
「あの機械()動いたよね、今!」
バロンはなぜか呆れ顔でこちらを見ている。
「いや、だって、絶対動いたよ!」
『・・・・・』
「本当に動いたんだよ!」
^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^
冒険者ギルドに隣接した武器防具店へ再びやって来た。
先程、クエスト完了手続きを済ませたので手持ちの資金も増えている。
「おや、お嬢さん、戻ってきたんですね」
「はい。先程ぶりです」
「どちらにするか決まったんですか?」
決まっていない、どうしよう。
好みでいえば、黒い方だが、灰色の方の大人っぽい雰囲気も捨てがたい。
きっと、私に足りない大人の色気というものを補ってくれるはず。これを着れば、もう子供に間違われない、と思う。
「灰色の…いや、黒の…でも、灰色……」
「…杖から決めますか?」
いまだに悩む私の様子に店員さんが提案してくれる。
並べられたのは白、黒、水色の杖。
白と水色の杖は少しだけれど回復関係のスキルに補正が掛かるらしい。黒色の杖は水魔法に少し効果があるとのこと。
白い杖は白銀の輝きを放つシンプルなデザインで、水色は透明感があり硝子に似た質感の杖である。
黒い杖は先端に赤い石が付いた長杖で、水なのに黒なところ以上に赤い石が気になる。水の杖で間違いないんだよね?
杖は杖で悩ましい。そういえば、識別を使っていない。
性能より見た目重視のお店と聞いたため使用することが思い浮かばなかった。
このお店での商品選びとしては正しいが探索者としては性能も確認しなければ。
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