第21話 レッツゴー!五行説


「・・・・たいした性能はありませんよ?」


「可愛いのでお願いします」


「それなら、ございます」


店員さんは満足げに頷いて案内してくれる。


魔物退治デビューというのは半成人祝いも兼ねているそうで、親は祝いの品として何時もより奮発してお金を出すそう。


子供たちも何時もはできない贅沢として格好いい、可愛い装備を欲しがるのだとか。


職人たちも使用可能な素材的に高性能な装備が作れない分、子供たちを喜ばせようとデザインに趣向を凝らし、見た目で差異を出しているらしい。



そんな職人渾身のローブを両手に持ち、悩むこと数十分の私がいる。



右手に掲げた黒色のローブを見る。


裾の方が白黒のチェックになっており、同じ模様のリボンが胸元についた可愛らしいデザインだ。


黒色でバロンとお揃いなところも高得点。



左手に掲げた灰色のローブを見る。


腰から下にかけて黒色のグラデーションになっており、下から覗く黒いレースが優雅で大人っぽい。


胸元を飾る深紅のリボンが良いアクセントになっている。



どちらにしよう?


バロンとお揃いのローブか大人っぽい優美なローブか。





^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^


迷ったので、先に冒険者ギルドの手続きに来た。



ギルドに入って直ぐ、アリアさんを探す。


幸いアリアさんは前に来た時と同じ真ん中のカウンターにいた。



「こんにちは、ルイーゼさん」


「アリアさん、こんにちは」



知っている人のいる安心感って素晴らしい。


ウサギクーゲルカニーンヒェン討伐の手続きをしてもらう。ウサギクーゲルカニーンヒェンのドロップ品は「草原兎の肉」だった。


戦闘終了と同時にアイテムポーチに入っていたらしい。ポーチの中に増えていた。


アイテムとして存在するかわからないが「兎の毛皮」などはドロップしなかった。


毛並みで言うと兎の毛が一番好きなんだけどな。



残念に思っている私の頭上でウサギが身じろぐ。


なんとなく、気まずいからウサギクーゲルカニーンヒェンのドロップ品は全部手放そう。目の前で兄弟を食べるのは気が咎める。



「もう東の草原で闘えるようになったんですね」


「ふにゃ?」


もう東の草原?まるでその前に段階があるみたいだ。



「今の時期、東の草原のモンスターは、他の方角のモンスターより飛び抜けて強くなっているんです」



アリアさん曰く、各フィールドのモンスターは季節毎に強さが異なるそうだ。


今の季節は春、東側のモンスターが一番力を増す季節で、南、西、北と弱くなっていくそうだ。


夏になると南のモンスターが強くなり、秋には西、冬には北のモンスターが強化されると言う。



五行説かな?東西南北なら四神?五行説だと中央が足りないな。いや、中央はここか。


やっぱり、四神で五行説により強さが変わるのかな。



五行思想については少しだけ齧っている。


何故かというと、ホラー系の動画を誤爆したときにレッツゴー!しながらドーマン・セーマンを切ると少しだけ怖さが和らぐからである。


セーマンは陰陽五行を象徴しているとされ、星形の頂点は木、火、土、金、水を表していると言われている。


また、各頂点をつなぐ線は相克の動きを示すとも。



あ、もちろん臨兵闘者も全部言えるよ。何度も唱えたからね。…あれ私、もしかして誤爆しすぎ?


猫に癒されようとして腐ったブルーベリーを真正面で見て泣くって、よくあることだよね?



閑話休題、クロウさんに聞いた周辺四国の説明を思い出す。


確か、通称が龍の国、鳳の国、虎の国、亀の国だったはず。


クロウさんに四国の通称を聞いた時にも少しだけ頭を過ぎったが、もしや四神に対応しているのだろうか。



キャラクリで覚えられる魔法スキルが木、火、風、水だったため、西洋の四元素を想定していた。


土の代わりに木が入っているのかと思っていたが、四神の方だったらしい。



四神は青龍、朱雀、白虎、玄武。玄武は蛇の尾をもつ亀だと記憶している。


朱雀の部分が一致しないが概ね四神に対応していると考えても良いだろう。


いつか役に立つかもしれない知識として心のメモに刻んでおく。



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