第19話 猫の十戒・竟の決意

前回のあらすじ

・運河のわきに探索者向けの宿泊用ボートが泊まっている。

・孤児院ボートも存在する。






「神父様!」


しんみりした気持ちで天使が通り過ぎるのを待っていると、クロウさんの後ろから女の子が飛び出してきた。



「神父様、昨日の続き!騎士様のお話聞かせて」


女の子はクロウさんに抱き着いて話をねだる。


他の子供たちも後から現れてクロウさんを取り囲んでいる。



「ルイーゼさん」


「クロウさん、お話ありがとうございました。…とても勉強になりました」


「いえ…」



私に気が付いた子供たちの視線が集まる。皆さんのクロウさんは解放するのでそんなに見ないでください。



「じゃあ、また」


子供たちを連れてクロウさんは教会の中に消える。



私は長椅子でくつろぐバロンとウサギを抱きしめた。


「・・・・・にゃー・・・・」


「もう家族だもの、最期まで・・・・・」



胸の内で猫の十戒を思い出す。




猫の十戒(改変ver)



1.我の生涯はだいたい15 年くらいしかない。その、ほんのわずかな時間でもお前が離れていると腹がたつ。



2.お前が我に望むことを理解するつもりはない。我は自由の化身なのだ。



3.我を崇拝しろ。



4.我を長い時間叱ったり、罰として閉じ込めたりするんじゃない。まぁ、でも、ダンボール箱の用意は許可する。


お前にも仕事や楽しみがあり、友達だっているのだろうが、我を放って置くことは許さない。



5.我に話しかけろ。何言ってるかわからないだろうって?うるさい。…声が聞きたいんだ。もっと褒めろ。



6.別にお前の言ったことなんて気にしてなんかない。ないんだからな。



7.叩く前に思い出せ。我の鋭く立派な牙を。お前の手の骨くらいかみ砕けるんだぞ。


我を撫でる手がなくなったら困るだろうから、手加減してやってるんだ。感謝しろ。



8.我が言うことを聞かない?まずは自分に問い掛けろ。食事の献上、櫛梳きをちゃんとしたか?


日なたで気持ちよく昼寝をしているのを邪魔しても怒るからな。我も年を取ると体が弱り、動けなくなる。お前は我の召使だと忘れるな。



9.我が年をとっても世話をしろ。お前がいないと困るだろうが。



10.最期の旅立ちの時にも、側にいろ。「かわいそうで見ていられない」とか「私のいないところで逝かせてあげて」なんて言うな。


撫でろ。許可してやる。なで続けろ。かわいいとか、いい子とか崇め奉れ。…お前がいないと寂しいだろうが。




私たちの最後がどのような形で訪れるかわからないけれど、最後まで側にいよう。


ひっそりと心に誓う。



それにしても、猫可愛い。ツンデレ可愛い。「側にいないと腹が立つ」=「寂しい」ですね、わかります。


猫のことを思い浮かべたら元気が出た。頬をなめて慰めてくれていたバロンに礼を言いながら立ち上がる。



よし、冒険者ギルドへ行こう。ポーションを買いに行くついでにクエスト完了報告もしてこよう。


ウサギクーゲルカニーンヒェン(隣のウサギではなく、東の草原に生息する種族としてのウサギ)の討伐が維持依頼にあったはずだ。



ウサギを抱っこして…兎って抱っこ嫌いじゃなかったっけ。あ、抱っこは嫌?頭の上なら良い?じゃあ、頭の上で。


バロンは抱っこ嫌いですか?街の中なら構わない?わーい、ありがとう。


頭上にウサギ、腕の中に黒猫を抱いて出発する。街中の最強もふもふフォーメーションだ。すごくもふもふしていて幸せな気分になれる。


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