第9話 冒険の始まり()


「ランクを上げる方法は一つ。依頼を受けてポイントを貯めることです」



お姉さんは右手を挙げて酒場側とは反対の壁を示す。


壁には木の板が打ち付けられており、そこに金具で乱雑に紙が貼られている。


これはお約束っぽい。



「依頼はあちらの依頼ボードから選択できます。受注する際には紙をはがし、受付にお持ちください」


すごくぽくて安心する。先程の機械()の二の舞にはならなさそう?



「また、依頼の中には維持依頼と呼ばれるものが存在します。


維持依頼には町の治安維持のためのモンスター討伐や常時需要のある品物の買取が含まれます。


この維持依頼は事前に受注する必要がなく、受付に規定のドロップ品などを提示いただければ依頼完了となります」


これも有りがちだな。



「維持依頼以外の依頼には期限があり、これを過ぎると失敗扱いになります。依頼に失敗すると罰金やポイントの減点などの罰則が発生するのでご注意ください」


うんうん。いい感じ。例のブツを思わせる気配はないぞ。


しかし確認は必要だ。



「依頼に関する手続きでさっきの機械()は使われますか?」


これは今後に関わる重要な質問だ。忘れずに、しっかりと聞いておかなければならない。


奴に再びまみえる可能性があるのか、否か。



「あれは登録時のみに使用する機械なので、依頼の受付等では使いませんよ」


苦笑するお姉さん。・・・だって、怖かったんだもん。


突然のホラーに私の蚤の心臓がはるか彼方にフライアウェイして、行方不明になるところだったのである。


ホラーとか夜寝られなくなるから絶対見ないし、本当に吃驚したのだ。



「依頼を受け、ポイントを貯めたら、昇級試験を受けられます。試験に合格できればランクアップ、不合格でも何度も挑戦可能です」


聞くところによると、昇級試験のために必要なポイントは初めの冠を得る場合でも結構多いみたいだ。試験に挑戦するのはまだ先の話だろう。


ランクアップのために必要なポイントも冠が増えるごとに多くなるようだし、三重冠なんて視認も難しいほど遠い話ではないだろうか。



「説明は以上です。ギルドのことでまた何か分からないことがあれば気軽にお聞きくださいませ。


最後に、私は当ギルドの受付係、アリアと申します。よろしければお見知りおきください」


あ、これは、ご丁寧にありがとうございます。アリアさんですね。次にギルドに来たときにもアリアさんの受付に並びましょう。ルイーゼまっしぐらで向かいます。






ところ変わって、南の高台にやってきました。



南の高台は最初の広場から冒険者ギルド側へ進んだ先にある南門を出て直ぐのフィールド。


冒険者ギルドからそのまま運河を下り、街の外に出てきた形である。



これからの冒険に胸を膨らませて門を出る。そして戻る。



「・・・・・」



予想以上にフィールドが暑かった。腕の中の耐寒性抜群な猫様は耐熱性においてはマイナスである。


一瞬で毛皮に触れた腕に汗が吹き出た。不快度指数100である。こんなに暑いだなんて、この先は灼熱地獄にでも続いているのだろうか。


南にはそこはかとなく暑いイメージがある。きっと南が特別暑いのだろう。



気を取り直して別の場所に行こう。


涼しそうなのは北だろうか。先程の暑さを早く忘れたいし、北に行こうか。


いや、しかし、北のフィールドは確か「北の沼地」。



冒険者ギルドで確認した地形では、東が草原、南は高台、西は砂浜、そして北が沼地である。


つまり泥と水の地形である。自慢の毛皮が汚れるなんて考えたくもない。やめよう。



残るは東と西。とりあえず東の草原に行ってみよう。

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