暑い夏の日
第1話
最近の記憶から遠くの記憶まで。
去年までそこにあった彼女の姿を追ってしまう。
じりじりと肌を焦す太陽に、少しずつ夏が近づいているのを感じた。
梅雨入りもまだだと言うのに、活発な太陽のお陰で歩いているだけで汗が滲んでくる。
朝の通学路で駅から学校まで歩く。
その途中にある商店街。そこから少し小道に入っていけば、懐かしい記憶が詰まった大きくて古い神社があった。
こんなところに来てしまうとは、彼女の
季節は移り変わろうとしている。
何もかもが真新しく輝いて見えた季節は終わり、じとじとと、じりじりと、鬱憤が溜まってしまうような季節がやってきた。
この暑さに負けないようにするように。溜まりに溜まった鬱憤を晴らすように。こんな気持ちさえも楽しむかのように。
この季節には催し物がたくさんある。
目の前に見えている神社にも催しがあり、来月の初旬には七夕祭りが行われる。
年に1度だけしか会うことのできない織姫さまと彦星さまが会う日に行われる星祭り。
庭に竹を立てて、五色の短冊に願い事を書いて祈りを捧げる。
星に願い事をするお祭りが今年もやって来た。
幼い頃からシキとカリンの3人で、ここの神社の七夕祭り。すぐに思い出せるほどに思い出は鮮明だ。
毎年、飽きもせずに食べるリンゴ飴。星祭りに星も見ずに食べる焼きそば。やたらと上手なシキの射的。カリンの下手くそな金魚掬い。当たらないくじ引きはどうしても引きたくなってしまう。
きっと、今年もそんな出来事がやってくる。
今年も変わらない思い出になるはずだ。
そんなことを思っている。
今年は去年とは違うはずなのに。
いつも一緒にいた3人の時間は少なくなったのに。
ずっと変わらない思い出に俺は囚われている。
桜の舞う季節に何かが変わると期待していた思いはどこかへ行ってしまった。
新しい学校に通って何かが起きる。
何かしらドラマチックなことが起きるのではないかと、思い違いして何も変わらずにここにいる。
季節は移り変わろうとしているのに、ずっと置いてけぼりだ。
そんな気持ちをごまかすように、何かしらの理由を探すように学校へ向かう道へ戻った。
俺の歩く道に彼女の姿は、もうどこにもなかった。
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