第2話
空色のスカートに白のTシャツ、パーマのかかったポニーテールの女の子。それと、橙色のタイトパンツに白のフリルシャツ、茶色の真っ直ぐと長い髪の女の子。
街角で見かけれれば2度見してしまうだろう女の子2人組は、この駅では目立ってしまっている。
「クルリちゃん。あの2人とも一緒に行動しようぜ」
すれ違う人にひそひそと話されている2人を指差す。
「……嫌よ。一緒にいるだけで目立つじゃない」
「えー、いいじゃんか。みんなといれば楽しい。そんな感じだよ」
「あなた、これが尾行なの理解しているの?」
クルリは遠回しに彼女達と行動すればバレてしまうと言っているようだった。
「まあ、大丈夫っしょ」
「ダメよ。橙色のズボンを履いて、着こなしているのよ。目立ち過ぎるわ」
「たしかに。アレを着こなす六花は目立ちそうだな」
「それは八千さんにも言えるわ。とても同い年とは思えないもの」
クルリはじっと2人を眺める。
たしかに、クルリと彼女達を比べるとサイズから同い年とは思えない。
「身長的な事はしょうがないよ。2人とも身長高いし」
「別にそれだけじゃないわ。それより、まず初めに身長の話が出てくるのは失礼ね」
2人を見ていた視線がこちらに向く。
頭一つ低い目線は俺を見上げている。
「いやいや、それほどでもぉ〜」
「褒めてないわ。会話にならないから、ふざけるのはやめてちょうだい」
ため息一つ吐いたクルリ。
そんなふざけあいをしていると、ショッピングモールへ到着した。
食品売り場、フードコート、コーヒー店。ユニクロやGUも入っている4階建ての複合商業施設。
足立区の家族連れが休日になると、こぞって集まる施設はここぐらいだろう。
今日も色黒の筋肉質なお父さんと金髪のお母さん、その2人を連れて楽しそうにはしゃぐ子供達がたくさんいる。
その人集りの中にシキと二階堂は踏み入っていき、視界の端に映る六花と八千も続いていく。
俺たちもそれに続こうとしていたが、クルリが如実に嫌な顔をする。
「どうしたの?」
「いえ、何でもないわ」
「その割には嫌そうな顔しているけど」
「少し人混みが苦手なの。こんなに暑いのに、よく集まるわね」
「まあ、ショッピングモールは仕方ないよね。夜の街灯に集まる羽虫と同じだよね」
「そこまで酷い感想は言ってないわ。私はその言葉に同意しかねるかしら」
“足立区のショッピングモールに集まる家族連れ”と“夜の街灯に集まる羽虫”は語呂的に近いと思ったがウケが良くないようだ。
「まあ、いいわ。見失う前に追いかけましょう」
「そうだね」
シキと二階堂を追いかけるようにショッピングモールへ入っていく。
入り口には家具や洋服、お手頃な日用品を売っている無印良品、その向かいにはペットショップが出迎える。
大人しく寝る犬を眺める子供を横目に通り過ぎて、目の前のエスカレーターを登っていく。
今のところはバレずに尾行できている。
後ろから見ているとシキと二階堂は楽しそうに笑い合っている様子が伺える。
「なんか大丈夫そうだな」
「そうね。楽しめてそうね。それよりも六花さんと八千さんはデートの日時を良く知っていたわね」
同じようにシキ達を追いかける六花達にクルリは疑問を抱く。
俺はシキと六花が同居しているので、違和感を抱かなかったが、それを知らないクルリにとっては不思議に思うことらしい。
でも、勉強会の時の行動を思い返せば、クルリは気付いてもおかしくない。
「私やあなたは朝一やコハルから聞いたとしても、彼女達は誰から聞いたのかしら」
「さ、さあ? シキ達に聞いてたんじゃないか?」
「そうなのかしらね」
クルリの鋭い着眼点に思わず動揺してしまったが、なんとか免れたようだ。
彼女も些細な疑問だったのだろう。これ以上は話題にすることはなかった。
3階で別のエスカレーターを経由して4階へと上がっていく。
4階は駐車場と映画館の入り口しかない。
人通りが極端に少なくなるので、シキ達と六花達が上がっていくのを確認するとエスカレーターに乗って後を追う。
映画館へシキ達と六花達が入っていくのをチラリと確認すると、入り口で足を止めた。
「これ以上ついていくとバレそうね」
「そうだね。ひとまず、映画が終わる時間までは待機だね」
「そうね。あそこの椅子で少し休憩しましょうか」
エレベーター前にはいくつかのソファが置かれている。
クルリはそこを指差して訊ねてくる。
俺は首肯すると、2人で向かい合っているソファへ別々に腰掛けた。
「さて。休憩がてら、色々と質問させてもらうわ」
「ん? 質問?」
「ええ、そうよ。朝一と六花さんが同居していることについてよ」
クルリの鋭い視線が俺に向く。
やはり、察していたようだ。
俺はどう答えていくかを考えて、彼女の質問を待った。
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