第8話
「そしたら、ラムネを1つずつ取って。企画した俺は最後に選ぶから」
俺がそういうとみんなラムネを見て、どれにするのか選び始める。
見た目の変化で酸っぱいラムネを見分けるのは無理だ。どれも同じような形をしている。
罰ゲームは『好きな人が誰なのか』を発表することだ。みんな言いたくはないことなのか選ぶ手が渋る。
ようやくみんなが選ぶと余ったラムネを手に取った。
「本当に罰ゲームするのか?」
「あったりまえじゃん! シキは負けるかもしれないから怖がってるのか?」
「そ、そんなんじゃねぇーよ」
素直に参加してくれるのはシキの良いところだ。
「それじゃあ、さっそくいただきまーす」
そのかけ声と一緒にみんなラムネを口の中へ入れる。
「うげ、すっぱ!」
そう声を上げたのはシキだった。
流石、ハーレム主人公。良いくじ運をしている。
「シキがハズレか。もう一人は?」
そう言って八千、六花、二階堂、クルリと見ていくが、特にハズレを引いたような表情もなく、首を横に振られる。
「私じゃないわ」
「私でもないけど……」
「そしたら、一体誰が……」
お互いが疑うように見合い始めたところで、俺は区切りを付けようと思う。
「ひとまず、シキはハズレ引いたから『好きな人』を言ってもらおうぜ」
俺がそういうと二階堂が目を大きくして、ゴクリと生唾を飲んだ。
そうだよね。普段が清楚な感じだけど、好きな人が好意を寄せる異性は気になるよね。
八千の表情を見ればニヤニヤと楽しげで、六花は興味なさそうな表情をしている。
「んで、あんたの好きな人って誰なの?」
「うぇ!?」
興味がないと思っていた六花はシキに訊ねる。
「だれだれー?」
「わ、私も聞きたいなぁー」
興味津々に近づく八千と顔を僅かに赤くさせた二階堂がシキへ寄っていく。
あそこはハーレムの中心地だ。
俺は満足したので、座卓越しにその様子を見守る。
そうすると、隣にクルリがシキに寄らずに座ったままだった。
「あなたにしては良い展開なのよね、きっと」
「どうしたの、クルリちゃん?」
「いえ。もう一つのハズレくじは、あなたが当たったんじゃないのかと思って」
「そんなわけないじゃーん」
「ハズレを引いていたら、あなたの好きな人を言ってもらっているところよ」
「実はクルリちゃんって俺に興味津々?」
俺はふざけるように笑って訊ねると彼女はこちらを射抜くような視線を向ける。
「あなたに好きな人がいるとは思えないからよ。人を想う気持ちがあるのか関心があっただけよ」
手厳しい言葉に俺は思わず苦笑いしてしまう。
「それは誰にだってあるよ。クルリちゃんこそ、好きな人いるの?」
「今はいないわ。昔にならいた事があるわね」
「そっか。そしたら、俺も同じような感じだよ」
クルリは変わらず鋭い視線を向けている。
「残念だけど俺はハズレを引いてないから、これ以上は秘密かな」
そういうとクルリは興味を失ったように騒ぎの中心に視線を向けた。そして、真似るように俺もシキたちを見た。
女子3人に寄られて
もう一つのハズレは彼女らの誰かが当てているはず。
ハーレム展開なら後でシキにそれを伝えると思っているが、今日の豪華景品はクルリの顔を立てて“彼女”へあげようと思う。
そろそろ、止めに入ろうとした時だった。
「シキー! おばあちゃーん、おじいちゃーん! 誰かいるー?」
遠くから聞こえる女の子の大きな声に部屋にいた人は動きを止めた。
「あ、お客さんだ! 悪いけど、対応してくるわ!」
これをチャンスと見たシキが後ろの
「あ、ずるいわよ!」
「逃げられちゃったか〜」
「……」
反応は人それぞれ。二階堂が少し哀しそうに手を伸ばした姿に、俺は何も言えなかった。
いや、その前から何も言えなかった。
シキの家に響いた声に俺は驚いて、気がつけばシキの後ろを追っていた。
部屋から出る時に見たクルリの表情は意外そうに驚いていた。それを見て何か言い訳やら説明をする余裕もなかった。
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