第6話
勉強も程よく進み、1日の物語も中盤に差し掛かった。
シキと二階堂の会話も頻繁に交わされ、外野から見ても良好と思える。
八千は六花に国語を教えながら、自分も数学を教えて貰うように、六花の得意教科を質問していた。
隣に座るクルリがつまらなそうにペンを走らせながら、俺だけに聞こえるように話しかけてくる。
「あなたの考えていることは分からないわ」
その言葉に俺は視線をクルリに向けた。
そのクルリはノートをこちらに少し寄せて、シャーペンでノートの文字をトントンと叩いた。
きっと、読めとのことだろう。
俺は従うようにノートの文字を読む。
『流れで勉強会に2人を誘ったけど、別の理由があったの?』
2人を誘ったことに何か意味があったのか聞かれているようだ。
俺もノートにペンを走らせて、小さな声でクルリに話しかける。
「いいや。本当にその場のノリだよ。面白くなりそうとは思ったかな」
「そう。結果的に良い流れになっているわね」
「まあ、結果的にはね」
俺はノートに書いた文字をクルリに見せる。
『二階堂の悲しそうな表情は予想外だった』
「人の気持ちを考えないからよ。あなたの行動は軽率なのよ」
「はは、軽率なのは間違ってないな」
「少しは反省した方が良いわ」
クルリはノートに書いた文字を俺に見せる。
『私はコハルのことだけ考えているわ』
「悲しい顔は友達として見たくないからね」
クルリはさらにペンを走らせて、ノートを見せる。
『軽率な行動でコハルを傷つけるあなたの行動は理解ができない』
その文字の続きをクルリはノートに書き込む。
『だから、あなたのことは死ぬほど嫌いよ』
クルリはその文字を俺が見たのを確認すると、今まで書いていた会話を消しゴムで消したのだった。
ラブコメ主人公の親友役としては仕方のない立ち回りだ。
ヒロイン達と
対して、ヒロインの親友役は1人のヒロインの成功を願って行動するのだ。
主人公とそのハーレムを作るために行動する俺とは行動原理が違う。
だから、嫌われるのなんて仕方のないことなんだ。
「けど、みんなで楽しく過ごせる事を俺は考えてた」
クルリにも聞こえないように呟く。
俺の言葉を聞き取れなかったクルリがこちらを見て首を傾げる。
「嫌われるのは慣れてる」
そう言えば、クルリは眉間にシワを寄せた。
俺はクルリの言葉を待たずに問題集とノートに向き合い、ペンを走らせ始めた。
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