第274話 緋色の部屋4
「湯浅先生は学校の理科の先生だよ。元だけどね」
砂橋は冷蔵庫から取り出したチョコチップが散りばめられた蒸しパンをかじりながらそう答えた。
今は笹川と俺が同じソファーに座り、向かいに座る砂橋に「湯浅先生」とやらについて問いただしているところだ。
「今は動画投稿で生計を立てようとして失敗してるところじゃなかったっけ?」
ますます怪しい人間だ。
元先生で、動画投稿で生計を立てようとして失敗したということは、今は無職ということか。そんな人間に協力を求めるのは少しだけ気が引けた。
「僕の高校時代の理科の先生なんだよね。理科じゃなくて化学だっけ。まぁ、細かいことは忘れたけど」
砂橋は人にあまり興味を持たない。
今までの依頼人達のことは覚えているだろうが、話題に出すことはほとんどないし、日常で熊岸警部や猫谷刑事の名前を出すことはない。砂橋が連絡を取るのは必要な時くらいだ。
利用したい時に勝手に連絡をしてくる身勝手な奴。
それでも、熊岸警部が砂橋を捜査に参加させないといけない理由は分かるが、どうして、湯浅先生とやらは砂橋にいいように使われることをよしとしたのだろうか。
「いい人だと思うよ。いきなり「ストーカー撃退用の失明ぎりぎりのとうがらしスプレーを作ろう!」とか言い出したりして、実験室を好きに使う人だったけど」
「砂橋さん、その人、危ない人ですよね?」
笹川は湯浅先生を危険人物として断定したらしい。
俺も概ね同意見だ。
「そんな奴に協力を仰ぐのか?」
「大丈夫大丈夫。きっと力になってくれるよ。それに湯浅先生も暇してただろうし」
やっぱり、無職なのか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます