第243話 学校潜入編31
「いじめてた方といじめられてた方のフルネーム?葛城颯太と葛城祐樹だけど」
依子から二人の名前を聞いた俺は表情を変えずに「そうか」とだけ言った。がやがやとしている教室内で七瀬は俺と砂橋の隣にひっそりと立っていた。
「なんで、ダンジョー先生、そんなこと聞くの?」
「ただの確認だ」
「弾正先生ねぇ、今まで被害者と加害者が頭の中でごちゃごちゃになってたの。おっかしいでしょ?」
隣にいる砂橋はけらけらと笑う。
そんなに俺が勘違いをしていたことが面白いか。
「なにそれ、おっかしー!」
「まぁ、葛城が二人もいたら、そりゃ分からないよね。二人とも苗字で呼んでる奴もいるし、まぁ颯太の方の葛城はそれが気に入らなくて祐樹につっかかってたもんね」
依子と夕夏も砂橋と同じように笑った。
ここに来るまでの道中で、死体のジャケットの裏ポケットに入っていた生徒手帳が葛城颯太のものだと教えてもらった。そして、七瀬に颯太の生徒手帳を確認してもらった後、ひょうたん池の橋の下に葛城祐樹の生徒手帳を見つけたらしい。
そして、庭崎と仲がいいのは、砂橋が七瀬に見せた生徒手帳の生徒かという質問に七瀬は首を横に振ったらしい。
つまり、庭崎と仲がいいのはいじめられていた葛城祐樹だったのだ。
俺は葛城という苗字だけでついつい庭崎がいじめの加害者と仲がよかったのかと思っていたが、それは違ったみたいだ。
そして、祐樹は庭崎に殺人事件が起きると言っていた。
「ねぇねぇ、祐樹くんのSNSを見せてもらっていい?」
そういえば、SNSを砂橋にまだ見せていなかった。依子は自分のスマホを取り出して、該当のページを見つけて、砂橋にスマホを渡した。
「ふーん。確かに今朝の十時からぽつぽつと更新してるね。誰かが動かしているのは間違いないみたい」
「私たち、全員、このアカウントは祐樹から教えてもらったから間違いないよ。その代わり、颯太のアカウントの方は昨日から動いてないけど」
それは死んでいるからだ、と言う他ない。
やはり、死んでいるのは颯太の方ではないか。
俺は砂橋を見た。
それならば、何故先ほど、死んでいる生徒の名前を俺と砂橋は間違えたのだろう。
祐樹のSNSはいまだに動いている。ならば、死んだのは颯太の方ではないのか。
「ねぇ、七瀬さん。隣の生活指導室を貸してもらってもいい?それと、えっと、顔知らないからどの子か分からないや。庭崎くんも呼んでもらっても?」
「分かりました」
七瀬が庭崎に近づいて、軽く話をしている姿に目もくれずに砂橋は教室の扉を開けた。
「……砂橋」
扉を閉めた俺は砂橋に問いかける。
「どうして、死んだのは祐樹の方だと言っているんだ?祐樹のSNSは動いてるんだぞ?」
「SNSって便利だよね。でも、更新している人間の顔を見ているわけでもないのにどうして本人だって言い切れるの?」
それもそうだが。
「SNSの本人確認はメールアドレスとパスワードのみ。それなのに、完全に本人だと思う方がおかしいって。しかも、祐樹くん達と過ごしているクラスメイト達ならともかく、祐樹くんのSNSを今日初めて見た僕たちにはなおさら分からないでしょう?」
砂橋の言う通りだ。
そして、先ほど死体は祐樹だと言っていたことを考えると、砂橋は祐樹のSNSを今動かしているのは颯太だと思っているのか。もしくは悪意を持つ第三者か。
「どうして、祐樹が死んだと思うんだ?」
砂橋は楽しそうに笑うと生活指導室の扉を開けて、中に入り、日差しが入り込む窓の前の椅子に腰かけた。
「じゃあ、改めて。噛み砕いて説明しようか」
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