第36話 10年越し

「はぁー・・・」

「だいぶ落ち着いたね」

「ああ、すまん」

「ううん」

 時生ときお君の呼吸が落ち着いてきた。

「では、時生君、一体どうしたの?」

 改めて質問。

「はい」

 すると、真剣な顔で私を見てきた。

 今までで1番カッコいいかも!

「聞いてくれ」

「うん」

 間を置いて。

「あんず、10年前は本当にごめんなさい」

 また!?

「いやいや、もういいよ!」

「改めて言わなきゃならんと思って」

「時生君・・・」

 もういいのに。

「本当にごめんな」

「もう大丈夫だから。高校生だよ?」

 そう、もう高校生なのだ。

「あんず・・・」

「ふふ♪」

 今が大切なんだから、良いの。

 するといきなり、抱き締められた。

「えっ!?」

 ゆ、ゆ、夢じゃないよね!?

「時生君、大丈夫?変なの食べた?」

「賞味期限も消費期限も守ってるから大丈夫」

 ん?会話おかしくない?私のせいか!


「あんず、俺・・・」

「はい」


 ドキドキ、ドキドキ・・・


「好きだ」


 ・・・・・・・・・・・・・・・


「あんずのこと好きだ」


 涙が止めどなく流れた。


「時生・・・く、ん・・・ううっ・・・私、わた、し・・・」

「うん」

「私も・・・ぐすん・・・す、好き、で、す」


 止まらない、止まらないよ。

 時生君の制服が、私の涙と鼻水で汚れちゃう。


「あんず」

 頭をなでなでしてくれた。

 幸せ過ぎでず・・・うわぁーん!て声出して泣きたい。

「ごめんなじゃい・・・制服汚じで・・・」

「気にしない」

「ううっ、うー!」

 恥ずがじいー!!!

「顔、ぐしゃぐしゃだな」

「だっでー!」

 嬉しいんだもん!

「よろしくな、あんず」

「ごぢらごぞ、よろじぐお願いじまず・・・うわぁー!」

「えっ!?おい!!」

 堪えきれず、声を出して泣いてしまった私でした。

 時生君、困らせてごめんなさい!


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る