第四章 時を越えて

第35話 今だ!

 結城斗緒哉 side


 振られた。分かっていた。

 でも、言わないと、前に進めないと思って伝えた。

 あんなに正直に言われるなんて想像していなかったけど、それでも良かった。

 今は気持ちがスッキリしている。

 前に進めそうだ。

 教室に入ろうとすると、隣の教室から時生ときおが出てきた。

「よっ!」

斗緒哉とおや

「さっき振られた」

「えっ」

 1番に伝えるのが筋だよな。

「だからさ!」

 時生の背中を思い切り叩いた。

「いてっ!」

「まだ校舎裏にいるはず。早く行け」

 俺が引き摺らないために、早くくっつけ。

「俺は」

「つべこべ言うな!男として行ってこい!」

「斗緒哉・・・」

「大丈夫、絶対大丈夫」

 親指を立てて、もう一押し。

 すると、今まで冴えない顔ばっかりだったのが、キリッと変わった。

「ありがとな」

「おう!」

 グータッチして時生の背中を見送った。



 安藤時生 side


 斗緒哉の押しで吹っ切れた。

 行くしかない。

 息を切らしながら校舎裏に向かって走る。

「あっ!安藤あんどう君!」

筒美つつみ武田たけだ

「どこ行くんだ?」

「校舎裏」

「何で?」

「あんずが待ってる」

「「!?」」

「じゃあな!」

 2人にも迷惑かけた、すまない。

「頑張れー!」

「頑張れよー!」

「おう!」

 いてくれ、間に合え、間に合ってくれ。



「うんしょっと」

 ようやく力が戻ってきたので立った。

「帰ろう」

 私は教室に向かって歩こうとしたその時。

 向こうから誰かが来た。

 なんだか息を切らしているような。

「まっ、待って、くれ」

「時生君!?」

 走って来たのは時生君だった。

「はぁー・・・はぁー・・・」

「だ、大丈夫?」

 すんごく疲れてるし汗凄いし。

 でも、爽やかだなぁ。

 水も滴る良い男、みたいな!キャーッ!

「あんず、今、時間、良いか?」

「うん、大丈夫だけど?」

「なら・・・聞いて、くれ」

「えっ?」

 一体、どうしたの!?


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