第26話 どこへ向かうのか?
湖波つぐみ side
ミスコンにあの子はエントリーしていなかった。
だから私は全力でダダをこねてこねまくり、
前夜祭の日にあの子に伝えた。
嫌だと言ったら諦めるつもりだったけど、言われると私がまたダダをこねるので、有無を言わせずイエスと信じて逃げた。
私はエントリーした人達を見てピンときていなかった。
可愛いのは分かる、でも何か違う。
写真から伝わるのは、自意識。
目立ちたがり。
控え目が見えない。
だから、私は最初から原石だと信じて、あの子を推薦した。
伝えなければならい相手がいるのだから。
舞台でおろおろしていたから手助けを。
魔法がかかるように、落ち着くように。
「みんなあなたの味方、だから自信を持って!ちゃんと言うのよ!」
※
佐藤あずき side
姉ちゃんの文化祭を見に来た。
盛大だ、さすが高校生!
出入口にいた人から、プログラムや案内図などが書かれたパンフレットを渡された。
開いて見ると、姉ちゃんのクラスは子供の広場と書いてあり、読み聞かせの時間もあった。
その他の所もザッと見る。
あっ・・・。
「姉ちゃん、マジか・・・」
スポットライトを浴びるタイプではないのに。
言葉が出なかった。
とりあえず、コンテストの時間までにうろうろすることにした。
見尽くしたので体育館に向かうと、見覚えのある人を発見。
「とき君!」
「おぉ!あずきちゃん!」
会ったならご一緒しようではないか!
「見に来たの?」
「書いてあったからな」
なるほどぉ~。
「一緒に行こう」
「だな、そうするか」
姉ちゃん、今伝えると良いかもよ?
とりあえず、タイミングがあったので叫んだ。
「姉ちゃん、ガンバー!」
あっ、睨んでる。
でも私の隣の人を見て変な顔してる、ウケるー♪
※
安藤時生 side
あずきちゃんと一緒に体育館に来た。
空いてる席を見つけて、横に並ぶように座った。
こんなのに出るタイプではないのに。
あの押しの強い生徒会長に無理くりかな?
頭が痛くなるな。
断らなかったということは、それなりに覚悟があったのだろう。
出番が来た。
えっ・・・
雰囲気が違っている。
いつも三つ編みおさげの髪型で、スカートの長さは普段より短い。
イメチェン、か。
モヤモヤする。
あんな姿を人前に出すな、と思う。
そう、あの時、ドキッとした。
斗緒哉に言われたあの一言。
『あんずちゃんのこと好きなんだ』
その瞬間に気づいた。
“あんずが好き”
取られたくない、強くそう思った。
だから今、彼女が普段と違う雰囲気なのに対して、イライラする。
すると、彼女は話し出した。
「私、佐藤あんずは、昔太っていました」
今、言うのか、その話?
「本当にぷくぷくして顔はまん丸で。でも、そのことに気付かせてくれたある男の子と親友の2人に感謝します。
痩せてみて、世界が変わりました。
メイクや服などのオシャレに目覚めたからです。
そしてやっぱり、友達が増えて、楽しい学校生活を送ることが出来ました」
俺は君を傷つけたのにー・・・
「あの時気付かせてくれたその2人に感謝します、ありがとう!以上です!」
拍手が沸いた。
俺は伝えないといけない。
誰よりも先に、この気持ちを。
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