第25話 この想い 後編

 クラスの出し物である子供の広場は好評で、絵本の読み聞かせはたくさんの子供たちが来てくれた。

 放送部の子達も読みごたえあって頑張れた!と喜んでいた。

 その親子の中に、超絶美人ママが赤ちゃんを膝の上に座らせて絵本を聞いていた。

 凄く驚いた。この田舎に美人ママはいるんだな。

 絵本の読み聞かせが終わると、その親子は教室を出た。

 私は気になってついていくと。あれ?先生?

はちさんお疲れ様です」

「あぁ、結美ゆみ

 えっ?まさか!

 赤ちゃんは先生の所に行きたいのか手を伸ばしている。

結唯ゆい、お父さんのとこに行きたいの?じゃぁはーい!」

「おっと」

 先生は赤ちゃんを慣れた手つきで抱っこした。

「抱っこは私より八さんが良いみたい」

「いやいや」

「なんか嫉妬しちゃう」

「なんだかんだで結美の方が良いだろ、な?結唯?」

 赤ちゃんに話しかける先生。

「あうっ?」

 首を傾げた赤ちゃん。

「あー!結美ちゃん先生ー!」

「わっ!つぐみさん!」

 湖波先輩の知ってる人?

「結美ちゃん先生、お久しぶりです!はっ!この子はもしや結唯君!」

「そうだよ♪」

「きゃわいいー♪」

 知り合いのようだ。

 様子を見ていると。

「あら?どうしたの?」

 美人ママさんと目が合った。

「あっ!えっと!」

「わぁ♪あんずちゃんだ!」

 湖波先輩が走って来て抱き締められる。

「結美ちゃん先生、この子、八先生のクラスの子で、あんずちゃん!」

 先輩、勝手に。

「はじめまして、八さんのの結美です。旦那がお世話になってます!」

 つ、妻!?

「・・・先生にはもったいない」

「なっ!」

 心の内が口から出ちゃった。

「佐藤あんずです」

「あんずちゃんね、よろしく♪」

 笑顔が素敵、可愛い!綺麗!

「そろそろおいで~結唯」

 すると、結美さんの言うことを聞いて結唯君はお母さんの所に。

「ほらな、やっぱり結唯は結美の方が良い」

「ううん、八さんの方だよ」

 なんだ、惚気か何か?

「うーん、ラブラブ♪」

「「こらこら」」

 仲良しで良きです!



「うん、これで大丈夫!見違えた!これでモテキ確定!」

「いやいや」

 いつもよりスカートを短くされ、髪型はストレートに。

 いつもはおさげなので新鮮だ。

「私はあんずちゃんに投票するから、これでナンバーワンよ!」

 湖波先輩が勝手に盛り上がっている。


『エントリーNo.7 1年生の佐藤あんずさん』


「呼ばれた!はい、出て出て~行ってらっしゃい♪」

 湖波先輩に見送られて、舞台袖から表舞台へ。

 スポットライトが眩しい、照らさないで。


 本当は6人だけの戦いだった。なのに、湖波先輩の猛プッシュで飛び入りというか、放り投げられたというか。

 私以外はみんな可愛い美人さんばっかり。

 私なんて場違いだ。時生ときお君・・・。


『これより、ミス・ミスターコンテストを開催します!』


 盛大な拍手が沸いた。

 やっぱり、辞退すれば良かった・・・。


 1人1人、自己紹介をして、司会者さんと楽しい会話をしていた。

 私なんか面白みないのに、どうすれば良いの?

 楽しい会話の後は特技があれば披露するという。

 学校のナンバーワンを獲得するためのこの審査の意義とは?

「では最後に佐藤あんずさん、こちらにどうぞー!」

 また拍手。もう走って消えたい!

「こんにちは!」

「こんにちは」

 うーん・・・。

「佐藤さん、エントリー理由を教えて下さい!」

「えーっと・・・その・・・」

 自薦じゃないし、勝手になんですが!?

 おろおろして、舞台袖にいる湖波先輩を見ると、先輩はウィンクをして画用紙を出してきた。

 そこに書かれていることを読めとばかりに指さしをしてアピールしていた。

 これで会話が進むなら!

「はい、湖波先輩が推薦しまして、昨日知るという」

「そうなんですね!?」

 そりゃ驚くよね。

「では、湖波先輩とは仲良くされていると?」

「はい、お世話になってます」

 うん順調!

「そうでしたかー!羨ましいですねー!」

 そうなの?普通なのでは?

「最後に何か特技や言いたいことがあれば!」

 何にもな・・・うぇっ!?

 湖波先輩、無理無理無理ー!

 今変な顔だ自分、ヤバいぞ!

「えーっと・・・えー・・・」

 言え言えオーラが半端ない。腹を括るしかない。

「いっ・・・言いたいことが!・・・あります」

 フェードアウトはよくない。

 すると、どこからか聞いたことのある声が。

「姉ちゃーん!ガンバー!」

 あずきー!!!

 声のする方を向くと直ぐ見つかり、妹に対して睨むと、隣には・・・うぎゃああああ!?

 時生君がおるうううううう!!??

 ダメだ、倒れそう、でも・・・。

「おーっと!湖波生徒会長が出てきました!」

 なんで今!?

「あんずちゃん、あのね」

 ひそひそ話をされた。それで落ち着いた。

「大丈夫、伝わるから!」

 そう言って元の場所に戻った。

「何か言われましたか?」

 司会者さんが言う。

 それに対して私は。

「元気と勇気を頂きました」

 と言った。

「では、伝えたいことをどうぞ!」

 司会者さんのふりで決心。


「私、佐藤あんずは・・・」


 幼い頃の残念な自分、それに気付かせてくれた彼と親友。

 それから努力したこと、変わって良いことがあったことを語った。

 最後に一言。


「あの時気付かせてくれたその2人に感謝します、ありがとう!以上です!」


 拍手喝采だった。


 伝わったかな?時生君に。

 だと良いな。

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