第21話 起こるべくして起きた

「・・・んず・・・あんず!」

「ふぁい!」

 どうやら寝てしまっていた。

「もうとっくに授業終わってお昼だよ」

「そっかぁ」

 私はおかしいのかな?

「あんず、しっかり!」

「ごめんね、美夜みやちゃん」

「私は平気。ただ、アイツ等が」

 嘲笑っている金井かないさんとその友達。

 それに対して、普通ならムカつくはずなのに、なんとも思わない。無関心だ。

「とりま、行くよ」

「どこへ?」

「こらこら」

 美夜ちゃんは私の頬を優しくぺちぺち。

「はい着いてきて」

「うん!」

 私は美夜ちゃんの後を着いて行った。



「「「いただきまーす」」」

 学食にいる。

「はい、あんずちゃん、あーん♪」

「あーん」

 パクっ

「可愛い!どうしよう!」

 美夜ちゃんの他に何故か湖波こなみ先輩までいた。

「先輩、どうしてここに?」

「可愛いあんずちゃんを助けるためだよ!」

 助ける?なんで?

「頭にクエスチョン浮かべないで!心配だよ」

 なんか涙目になってるような。

「湖波、落ち着け」

たちばな君は黙ってて!」

「そんな・・・シュンです」

 相変わらずの会話。

「美夜ちゃん、あんずちゃんの心、ヤバいよね」

「はい、かなりヤバいかと」

「だよねだよねー!どうすれば・・・」

 みんな私に気を遣っている。

 そんな気がした。



「あんた1人で良いの?」

「うん、頼まれてる買い物あるし」

「気をつけるのよ!何かあったら即電話!必ず私駆け付けるから!部活なんてくそくらえ!」

「そんなこと言わないで!でも、千夏ちかありがとう」

「ふん!嫌なのアイツが!」

 ごめんね、千夏、みんな。


 買い物が終わり、家に向かって歩いていた。

 公園前を歩くと、そこに3人の人影が。

「あら、ぐうぜーん♪」

「・・・!?」

 金井、さん・・・。

 千夏の言葉を思い出す。慌ててスマホを鞄から出した。

 電話、電話、でっ・・・。

 手が震えて上手く開けないその時。


 落としてしまった。


「あっ・・・」


 取ろうと屈むと背中を思い切り押されて倒れた。


「痛い・・・」


 私のスマホは金井さんの手にあった。


 最後の砦が・・・ヤバい。


「返して欲しい~?」


 んっ、ちょっ・・・起き上がれない私を平気で踏みつける。


「返・・・して・・・」

「どぉ~しよぉかなぁ~」


 足でうつ伏せの私の背中をグリグリと踏みつける。


「ちょっと、やり過ぎじゃない?」

「黙ってて!」


 うっ・・・息が・・・


「ねえ?なら、私の言うこと聞いてよぉ」

「な、に?」


「聞いてくれたらぁ、返すからこれ」

「分かった、だから・・・うっ!」

「良い子だねぇ~」


 早く、誰か・・・


「学校、来ないで」


 頭が真っ白になる。


「なんならぁ~自主退学して欲しいかもぉ~」


 退学なんかしたら・・・私・・・わた、し・・・


「嫌だ!」

「えー?」


 学校辞めたら、会えなくなる。

 生き甲斐がなくなってしまう。

 ようやく私は目が覚めた。


「絶対嫌だ!辞めるもんか!」

「ふーん、ならぁ・・・こうしよーっと♪」


 金井さんが私のスマホを叩きつけようとしたその時。

「何してんだよ?」

「なっ!?」

時生ときお、君・・・」

 金井さんのスマホを持つ手を掴んでいた。

「離して!」

「スマホ返すなら」

「・・・っ」

 悪あがきか、スマホが金井さんの手から滑り落ちた。

 とっさに手を伸ばしキャッチ。危なかった。

 金井さんの手を時生君は離した。

「なんで・・・なんでなんでなんで!!」

「それは自分の心に聞けや」

 そう言って時生君は金井さんを軽く押すと、後ろにふらつきつつも、なんとか体勢を戻す。

 私の背中に乗っかっていた金井さんの足はない。

 苦しさから解放された。


「絶対、許さない」


 金井さんは友達と一緒に走り去った。


「時生君、ごめんなさい」

「大丈夫か?」

 私を起こしてくれた。

「ありがとう」

「悪かった、気づかなくて」

「ううん、私が悪いから」

 苦笑いするしかない。

「あっ!姉ちゃん!」

「あずき!?」

 なんでいんの?!

「姉ちゃん、怪我は?!」

「背中に痛みがあるだけ」

「姉ちゃーん!」

 泣きながら抱き付かないでマジで痛いから!

「とき君、ありがとう」

「どういたしまして」

 ん?なんかおかしい。

「ねえ、なんでいんの?」

「姉ちゃん来ないからおかしいと思って、母ちゃんにスマホ借りてこっそりメモったとき君の電話番号にかけて連絡して、今に至る」

 ちゃっかりしてんな!

「良かった良かった!」

「あずき、明日お菓子買って帰るね」

「マジで?やったー!」

 お菓子で喜ぶ妹、可愛いじゃないか。

「さて、帰ろうか」

「うわっ!」

 おーおーおー、お姫様抱っこおおおおお!!??

「あー、お熱い!」

「あずき!」

「へへっ♪」

 あずきは散乱した買い物の品を袋に入れて持った。


 抱っこされたまま、私は帰宅したのであった。

 父の気絶、母のお祭り騒ぎには驚いた。

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