第19話 悩み所とそう言えば

 平幡八 side


 教室の空気が悪い。

佐藤さとう、顔色悪いぞ』

『大丈夫ですからご心配なく!』

『クスクス』

 こっちを見て笑っている。

『かなっ・・・』

『ダメです、先生』

 佐藤に止められた。


「くそっ・・・」

 俺は手のひらの上で踊らされているのか?

 どうすれば良いんだ・・・。

「はーち先生♪」

「なんだ、湖波こなみか」

「なんだってなによ!」

「はいはい、すまん」

 こんな時に来るな。

「ところで先生気づいてる?」

「ん?」

「あんずちゃん、元気ないよ」

「分かってる」

「なら早く手を打たなきゃ!」

 つぐみよ、良いアイデアがあるなら教えてくれ。

「あんなに可愛い子を傷付けたらお姉さん許さないんだから!」

 どっかで聞いた台詞。

 お姉さんって1つ違いなのにな。

「あっそうだ」

 俺はつぐみに伝えてなかった。

 母親のめぐみさんには伝えたけど。

「ほれ、見ろ」

 つぐみにスマホの画面に映る写真を見せた。

「何々?わっ!ベビちゃん!?」

「うん」

「ママだけに教えて私には!」

「お前居なかったからあん時、そしたら忘れてた」

「えー!最悪ー!」

 怒るな。ここ職員室。

「それにしても結美ゆみちゃん先生、変わらずお美しい」

 なんと言えばいいのやら。

「ベビちゃん、きゃわいい~♪」

「だろ?」

「男の子?女の子?名前は?」

 質問内容2つは多い。

「男、名前は結唯ゆい

「カッコイイ!いつか結唯君に会わせて!」

「はいはい」


 10年前に出会った。

 つぐみが小学1年の時の担任だった妻の結美。

 最初は全く気づかなかった。アピールされていることに。

 ちょっとしつこいな、くらいに流していた。

 それを七滝ななたきに話したら「バカか?」と言われた。

 そうしたら、ある日、告白された。

 俺は断ろうとした。

 断る理由を話すと結美は「その人を大切にして良い、それで良いから」と言った。

 そこで決心。交際して、後に結婚した。

 プロポーズの時にも改めて言った。

 過去のことを。

 そしたら「それで良いよ、さっ報告に行かなきゃ!両家の挨拶よりも先に」て。

 結美には頭が上がらない。

 本当に感謝している。


「喜んでるよきっと」

「だと良いな」

「今でも好き?」

「大人をからかうな」

「言ってよー!」

 直接君に言うって決めている、誰かを通しては言わない。

「お前はどうなんだ?いい加減にたちばなに言ったらどうだ?」

「101回目の告白をしたらイエスって言うって決めてるの!」

「は?」

 なんか聞いたことあるようなワードがあった気が。

「おばあちゃんとママが見てて、私も見たらハマって!」

 うーん、頭痛が。

「今現在、50回告白してるからあと51回!」

「気が遠くなる」

 橘、頑張れ。

「あっ、来年のお墓参りどうする?」

「気が早いな。行くぞ」

「だよねー」

「あのなぁ」

「ママ、命日は酒瓶1人で飲みほして空になったそれを抱き枕にして寝てるの毎年」

「毎年・・・そして相変わらず酒豪」

「そんでパパがママを抱っこしてベッドに寝かせるわけ」

「大変だな」

「パパ、そんなママが可愛いって」

「もう帰れ」

「お話聞いてよー」

「俺は今大変なんだ!」

 なんなんだ全く。

「協力出来ることがあれば協力するから!」

「ありがとな」

「任せなさい!」

 そう言ってつぐみは職員室から出て行った。

「ところで・・・あいつ、何しに来たんだ?」

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